2014/06/18

回復への旅路


2014年6月号エッセイ
福岡県立大学 四戸智昭

○ある人からの質問メール
 
先日、ある人から電子メールで質問を受けた。ここ数年、不安感にさいなまれ、とある強迫観念に悩まされ続けているのだという。いくつかの精神科を受診したが、これと言った診断名はつかないまま3年近くが経過し、それでもその辛さから、新しいある精神科医を受診するに至ったのだという。その主治医から告げられたアドバイスは、とある「自助グループ」に参加することがよいのではないかということで。その人は、その後、私に質問のメールを書いてきた。
 
 質問の内容は、次のような大きくふたつの点についての質問だった。ひとつ目は「自助グループに行くと、同じような辛い体験をしている人の話を聴かなければならないと思うが、その事がかえって今の自分の辛さを増幅しないか」。というものだった。
 
 続くふたつ目の質問は「もし、自助グループに参加をするとしたら、どのような点に注意すればよいのか」というものだった。
 
 自助グループには、これまで何度かこのニューズレターのエッセイでも紹介しているから、詳しい紹介は割愛するが、同じような問題や悩みを抱えた人たちが、互いに自分の事を語るグループがこの自助グループである。1930年代のアメリカで野火のように広がった自助グループの活動は、今では世界中に広がっていて、多くの人たちが様々な自助グループに繋がっている。





○質問へのお返事
 ところで、先の電子メールへの質問に、私は次のように綴って返答をした。

 「電子メールを拝読しました。直接お目にかかって、お話を伺ったわけではないので、あなたからのメールの文書の情報だけを読んで、という前提でお返事いたします。まず、ひとつ目の質問に対する返答です。主治医が、処方薬ではなく自助グループに参加を勧めたという事は、その主治医にとって今まで正体不明だったあなたの症状は、意味がある症状であり、その症状の理由のひとつにあなたの生育歴があるとお考えになったからだと思います。
 
 グループに参加すれば、あなたがおっしゃるように、あなたと似たような症状を訴え、あるいは似たような過去の体験を訴え、それらを聴くことになり、時にその事があまりに辛くて涙することもあるでしょう。
 
 しかし、大切なのはそういった他者の話に耳を傾け、辛くなったらその仲間と一緒に涙することです。そうすることで、自分は“ひとりぼっちではない”という感覚を得ることが出来るようになります。
 
他者の話を聴く事が出来るようになるには、場合によっては3ヶ月、あるいは半年以上を要するかもしれません。それは、多くの人たちにとって、他者の話は自分にとって辛いから無意識に聴かない。あるいは聴くとかえって大変な事と向き合わなければならなくなるから無意識に聴かない。という不安から来るものです。この不安を既にあなたは訴えているわけです。しかし、最初の数回で、この不安から逃げるためにグループへの参加を辞めてしまう人も沢山いらっしゃいます。」

 「ふたつ目の質問への回答ですが、主治医に言われたから参加するのであれば、回復は望めないでしょう。あなたを救えるのは主治医ではなく、他でもないあなただからです。ですから、自ら進んで参加することが何より重要です。その点、あなたはこのように私にメールを書いていらしたのですから、何とか今の状況を打破したいと心から願っていると言うことの表れでしょう。

 グループに参加して、回復感を得られるようになるには少なくとも1年はみた方がよいでしょう。グループに参加するというのは特効薬ではありませんが、それでも私はあなたのように苦しみながらも、自ら進んでグループに参加し、今では逆に苦しんでいる人たちを援助していている人たちを数多く知っています。」

 ご本人からは、また丁寧なお返事を頂いた。「不安がないわけではないが、回復しない課題はないのだと思いました。来週からグループに参加しようと思います。」という事だった。この人にとっては、大きな不安の道のりだが、その先には課題からの回復が待つ道に見えたのだろう。この人は、まだ気がついていないかもしれないが、既にこの人の回復への旅路は始まっているのだ。



●福岡県立大学 四戸智昭嗜癖行動学研究室@21世紀家族研究所WEBサイト
URL http://www.family21.jp/

●福岡県立大学 嗜癖行動学研究室@21世紀家族研究所 facebookページ
URL http://www.facebook.com/shiheki

講演「困難を抱えた家族を支える」のご案内

福岡県人権啓発情報センター主催 県民講座2014 にて講演をします。

タイトル:「困難を抱えた家族を支える」
とき:2014年9月27日(土)13:00~14:40
ところ:福岡県春日市クローバープラザ
参加費:無料

申込:開催日当日まで(可能な限り1週間前までにメール、FAXでお申し込みください。)

問い合わせ先
福岡県人権啓発情報センター事業課
電話:092-581-1271
FAX:092-584-1273

http://www.fukuokaken-jinken.or.jp/informations/lecture.html





2014/05/13

講演会のご案内「人間関係を阻害するクセに気づく」

講演会のご案内

2014年5月25日(日)
人間関係を阻害するクセに気づく~困難を抱えた機能不全家族へのアディクションアプローチ~
について、90分ほど講演をします。

場所は、福岡市あいれふ10階 講堂

お問い合わせ先
NPO法人 日本交流分析協会九州支部 事務局 土斐崎由美
〒814-0031 福岡市早良区南庄1-2-10-A201
Tel 050-3707-5552 Fax 092-303-8770 e-mail qdcgr334@yahoo.co.jp
◆ お申込期限 5月19日(月)まで



2014年度の不登校・ひきこもり相談会のご案内

 不登校やひきこもりの子を抱えた家族や、その家族を支援している方々を対象とした「ひきこもり相談会」を今年も行います。昨年度は、福岡県内各地から、多くの方が飯塚までお越し頂きました。

 1回当たり約1時間ほど、四戸がじっくりとお話を聴き、ご家族に必要な解決策について探っていきます。相談料は無料です。

 詳しいお問い合わせは、
 福岡県嘉穂・鞍手保健福祉環境事務所 健康増進課 精神保健係
 電話:0948-21-4875までお電話にてお申し込みください。

【2014年度の相談会開催予定】(定員制各回3組まで)
1) 5月15日(木)13:00~16:30
2) 7月31日(木)13:00~16:30
3) 9月11日(木)13:00~16:30
4)11月13日(木)13:00~16:30
5) 1月 8日(木)13:00~16:30

場所:福岡県飯塚市新立岩8-1 福岡県飯塚合同庁舎