2025/04/11

—ひきこもりサバイバー47 -スマホを踏んだひきこもり-

  福岡県立大学で嗜癖行動学を研究している四戸智昭です。

ひきこもりからのサバイバー(生還者)の声に学ぶことが大切だと思い、元ひきこもりのこだまこうじさんにエッセイを書いてもらいました。随時掲載の予定です。
今回は、『あなたはひきこもりですか? それともひきこもり脱出者ですか?』というお話。

◆◆◆

ごろんと寝返りを打ったらスマホに手が当たった。

ベッドに 座ったときにスマホがお尻の下にあった。

 なんてことはないでしょうか?

 私はひきこもっていたので携帯時代に乗り遅れ、ずっと無手で過ごしていました。

 スマホを買ったきっかけは

 「ひきこもっている息子にスマホを買ってあげたのにその日に使わないからと 言われた。スマホで外につながってくれたらと思っただけなのに」 

 という相談を受けたからでした。

 私は「ひきこもっている人にスマホ渡してもコミュニケーションをとる 相手なんていませんよ。普通の反応だと思います」と返事をしました。

 特に今まで話もできなかった親からスマホを渡されるとひきこもりの人はそれで私たちと話をしなさいとの圧すら感じてしまいます。

 それを伝えたのですが自分が持っていないのに言うのは違うと思ったのですぐにアップルストアで購入しました。

 そして使い方がわからなかった話はどこかでしたと思います。

 ともあれ面と向かっては話せなくてもスマホでなら親などととやりとりができるという例があるというのは 選択肢が増えていいと思います。

 しかしこれは記録的な興行収入を出したとか大ヒットした作品のように 「すごく珍しい状況がニュースになる」 ということと同じで常に起こること、起こりやすいことではありません。

 あなたも珍しいことは人に話したくなりますよね。

 そして話しているうちにそれが当たり前のことだったように感じてしまいます。

 「あの作品はあれだけ有名なんだから素晴らしいに違いない、みんな知っている、使っているに違いない」

 という意識で生活して実はそれをニュースで聞いていても見ていなかったり、 使っていなかったりする人の方が多いことを忘れてしまいます。

 戦場に一人取り残された兵士に通信機だけ届けて 

 「私たちにできることはこれだけだ」

 「わかりました。全力を尽くして帰還します!」

 で生還する話は映画です。

 ただこれが実話をもとにした映画なのも確かなのです。

私は 今、買ったときはちゃんと箱に入れて机の上に置いていたスマホを床に放り出して充電していて踏んだ瞬間に そんなことを考えました。

 国や県が「ひきこもり対策はこれ」と決めたときはともかくその後、 それに慣れていくと怖いことになるのではないかと思ってしまいました。

 今まで大切にしていたスマホをたった一年後には踏んでもそんなに気にしなくなってしまうように。





こだまこうじ (元ひきこもり。1976年福岡県飯塚市生まれ、同市在住。)


<プロフィール>
 中学時代いじめ被害、高校で不登校に。その後、最初のひきこもり時代を経験。このとき、「キツイから精神科に連れて行って」と親に泣いて希望するも、完全に無視される。周囲から就労を強要され、専門学校へ入学。その後、就労するも就職先の社員寮で動かなくなっているところを発見され、会社は9か月でクビ。4年間の本格的なひきこもり時代に突入。
 その後、保健所の支援でひきこもりから脱出。2009年、保健師にとってまれにみる成功例として福岡県嘉穂・鞍手保健環境事務所の「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーに就任。自立できるほどの収入はないが、ひきこもり当事者家族の話を聴いて支援をすることになる。
 しかし、2020年に国や県がひきこもり当事者への就労支援を加速させることになり、「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーとしてのお役御免となる。
 「死んで地獄に行ったら、鬼に責め苦を喰らい、極楽に行っても悟った超阿弥陀如来に解脱するまで修行させられる」ことを恐れて、今日も何とか生き延びている。

2025/04/04

—ひきこもりサバイバー46 -そして「ひきこもり」へ-

  福岡県立大学で嗜癖行動学を研究している四戸智昭です。

ひきこもりからのサバイバー(生還者)の声に学ぶことが大切だと思い、元ひきこもりのこだまこうじさんにエッセイを書いてもらいました。随時掲載の予定です。
今回は、『あなたはひきこもりですか? それともひきこもり脱出者ですか?』というお話。

◆◆◆

あなたにとって「ひきこもり」とははなんでしょうか?

 登校拒否もとい不登校に当てはまらなくても三日子供が学校に行きたくないと言続ければもはやそれは「ひきこもり」への心配につながります。

 「ひきこもり」になってからでは遅い!

 そんな気持ちがあるのではないでしょうか?

 そして厚生労働省のひきこもりの定義に当てはまって相談に行くと 

「もっと早く相談に行けばよかった」 と思い、

 「どうして三日目に今の対応をしてくれなかったのか!」 と憤りを感じるでしょう。 

 そこには「ひきこもり」という言葉が医学的には新語であり、 弊害も知られていなかったので調査をやることも大変だったという 歴史があります。

 ほんの三十年ほど前まで 「ひきこもり」は「閉じこもり」でした。

 「閉じこもり」からも 「自分の意志で社会から避難している」 という意味合いは感じられますが語感としてはニュースで使われる

 「犯人は人質を取って立てこもっています」

 「ジャンボ機の中に閉じ込めらた人たちは」

 「炎天下の中水も与えられず屋外の物置の中に閉じ込められ」

 といった事件性のある言葉を私は感じてしまいます。

 一方で「ひきこもり」というと事件性がある表現とは無縁なので ソフトで受け入れやすいと言えます。

 実体の表現としても「閉じこもり」より「ひきこもり」の方が優れていると 私は感じます。 

 斎藤環先生という方が頭をひねって「閉じこもり」から「ひきこもり」という言葉をひねり出したもののそれが一般化するまではすごく長くかかりました。

 当時の高校生が五十になるくらいの時間がかかりました。

 芸能人とかが「ふだんは家にひきこもってゲームばっかりしてます」などとテレビで言っているのを聞くとひきこもりという言葉の柔らかさ、秀逸さとともに言葉が定着するには時間がかかるなぁとしみじみ思います。

 ただコロナ禍で世界が大混乱に陥っている様子を見るとそれも当然かなとも思います。

 コロナ発生、注意喚起、自粛、新株登場、感染拡大、ワクチンとかかったら死ぬかもしれ ない病気でさえ、その実態を見極め対応するまでに大変な時間資源を突っ込んでまだまだという感じです。

 2003年にSARSで大混乱に陥って18年後に同じような状況に対処するのが難しいように、ひきこもりが一般に認知された時期を考えるとひきこもり理解と解決には まだまだ時間がかかりそうです。

 ライトノベルや漫画、アニメ、ドラマなどにより「ひきこもり」というキャッチ―なキャラクター性が定着したおかげで「閉じこもり」のころより事件性が感じられなくなり、ひきこもりの人が発言しやすくなったおかげで

 昔あった「家に閉じこもっている成人」=「事件を起こすかもしれない危険人物」 という構図は崩れつつあります。

 そしてコロナ禍の「お家時間体験」により、それは加速していくでしょう。

 ひきこもりという言葉を作ってくれた斎藤環先生に感謝です。






こだまこうじ (元ひきこもり。1976年福岡県飯塚市生まれ、同市在住。)


<プロフィール>
 中学時代いじめ被害、高校で不登校に。その後、最初のひきこもり時代を経験。このとき、「キツイから精神科に連れて行って」と親に泣いて希望するも、完全に無視される。周囲から就労を強要され、専門学校へ入学。その後、就労するも就職先の社員寮で動かなくなっているところを発見され、会社は9か月でクビ。4年間の本格的なひきこもり時代に突入。
 その後、保健所の支援でひきこもりから脱出。2009年、保健師にとってまれにみる成功例として福岡県嘉穂・鞍手保健環境事務所の「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーに就任。自立できるほどの収入はないが、ひきこもり当事者家族の話を聴いて支援をすることになる。
 しかし、2020年に国や県がひきこもり当事者への就労支援を加速させることになり、「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーとしてのお役御免となる。
 「死んで地獄に行ったら、鬼に責め苦を喰らい、極楽に行っても悟った超阿弥陀如来に解脱するまで修行させられる」ことを恐れて、今日も何とか生き延びている。

2025/03/28

—ひきこもりサバイバー45 -私が思う世間のひきこもりの定義とは?-

  福岡県立大学で嗜癖行動学を研究している四戸智昭です。

ひきこもりからのサバイバー(生還者)の声に学ぶことが大切だと思い、元ひきこもりのこだまこうじさんにエッセイを書いてもらいました。随時掲載の予定です。
今回は、『あなたはひきこもりですか? それともひきこもり脱出者ですか?』というお話。

◆◆◆

あなたはひきこもりと聞いてどんなイメージを持つでしょうか?

 部屋から出ない?

 家から出ない?

 それとも会社に行ったり学校へ行ったりしない?

 サポート施設には通うけれどそれ以上の進展がない?

 私の感覚としては 「みんなが仕事をしているのに、学校に行っているのに あなたはそれをしていない」という感覚が今の世間の人のひきこもりの定義のように感じられます。

 簡単に言えば仕事がめちゃくちゃ楽しくてめちゃくちゃ充実していて 

 「一生懸命働くことでこんなにも人生は豊かで幸せなのにそれを体験しない なんてもったいない!!」

と思ってくれているんだろうなぁと感じるわけです。

 テレビなんかで「仕事ないときは家に引きこもって出かけたりしないんですよ」と 芸能人の人が言っているのを見ても「ひきこもっている」ことは 楽しくて充実している人生を無駄にしてるという感覚があることがわかります。

 そう考えるとひきこもりをサポートする皆さんが外に出ることを進める理由は外の方が幸せだという確固たる意志によるものだとわかります。

 ちゃんと「人並みに」幸せになりたいな。

 そんなことを思う今日この頃でした。






こだまこうじ (元ひきこもり。1976年福岡県飯塚市生まれ、同市在住。)


<プロフィール>
 中学時代いじめ被害、高校で不登校に。その後、最初のひきこもり時代を経験。このとき、「キツイから精神科に連れて行って」と親に泣いて希望するも、完全に無視される。周囲から就労を強要され、専門学校へ入学。その後、就労するも就職先の社員寮で動かなくなっているところを発見され、会社は9か月でクビ。4年間の本格的なひきこもり時代に突入。
 その後、保健所の支援でひきこもりから脱出。2009年、保健師にとってまれにみる成功例として福岡県嘉穂・鞍手保健環境事務所の「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーに就任。自立できるほどの収入はないが、ひきこもり当事者家族の話を聴いて支援をすることになる。
 しかし、2020年に国や県がひきこもり当事者への就労支援を加速させることになり、「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーとしてのお役御免となる。
 「死んで地獄に行ったら、鬼に責め苦を喰らい、極楽に行っても悟った超阿弥陀如来に解脱するまで修行させられる」ことを恐れて、今日も何とか生き延びている。

2025/03/21

—ひきこもりサバイバー44 -簡単なひきこもりの原因追及-

  福岡県立大学で嗜癖行動学を研究している四戸智昭です。

ひきこもりからのサバイバー(生還者)の声に学ぶことが大切だと思い、元ひきこもりのこだまこうじさんにエッセイを書いてもらいました。随時掲載の予定です。
今回は、『あなたはひきこもりですか? それともひきこもり脱出者ですか?』というお話。

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あなたは頭が痛いとき、鼻水が出るとき、その原因は何だと考えますか?

 では人生がうまくいっていないときは?

 答えはそれぞれだと思います。 

 そしてひきこもりについては後者の論調で語られることが多いように 感じます。

 簡単に言えば「努力すれば何とかなるのになぜ努力しないんだ」という 論調です。

 その良い悪いはおいておいて今回は前者の考え方でひきこもりの原因を追及していこうと思います。

 考え方としては「なぜその状態を続けているのか?」を基本とします。

 そこで参考になるのが「あなたはなぜ今の会社で働いているのか?」です。

 答えの出し方は人生がうまくいかないという理由の特定が困難な考え方ではなく、頭痛いし鼻水も出るから風邪かなの簡単な考え方です。

 精神的ではなく、物理的な考え方と言ったらわかりやすいでしょうか?

 そうすると 「あなたが今の会社で働いている原因」は「入社試験にパスしたから」 となります。

 「あなたがその仕事を続けている原因」はもちろん「会社があなたを首にしないから」です。

 あなたが「仕事辞めたいなぁ」と思ったとき会社が「じゃあ首だよ」と 即座に反応すれば、あなたは仕事を続けることができません。

 仕事を続けたくても会社が「首だよ」と言ったら続けられません。 この考え方で行くと 「ひきこもりの人がひきこもりを続けている原因」は 「会社学校があなたは首だ」といったからとなります。

 ひきこもりの人の心を深堀せず、表面の現象だけ見ればそうです。

 そして「その状態が続いている原因」は「会社学校がひきこもりの人を首にしたままだから」です。

 「社会がひきこもりの人を必要としていない状態」といった方が的確かもしれません。

 少なくとも「ひきこもっている人を高給好待遇でわが社に!」という状況にはありません。 

 日本には昔高度成長期というのがありました。

 「誰でもいいからうちの会社に入ってくれ!」 という時代です。

 ちなみにその時代は「校内暴力全盛期」 不良問題児でも学校を卒業できた時代でもあります。

 廊下に立たされたり、竹刀持った教師にぶん殴られる時代でもあります。

 景気がいいのでとにかく人が欲しい。

 そんな会社の需要と学校の供給の関係が生み出した現象でした。

 今はどうでしょうか?

 コロナ禍の中で仕事をしたくてもできないともがいている人たちを見ているとついこんなことを考えてしまいます。

 今までやってきた仕事ができなくなり、でもすぐに同じやりがいと収入を得ることができない。

 それは私には人並みの幸せを求めて挫折し、もがいているひきこもりの人たちと何も違わないように思えてなりません。






こだまこうじ (元ひきこもり。1976年福岡県飯塚市生まれ、同市在住。)


<プロフィール>
 中学時代いじめ被害、高校で不登校に。その後、最初のひきこもり時代を経験。このとき、「キツイから精神科に連れて行って」と親に泣いて希望するも、完全に無視される。周囲から就労を強要され、専門学校へ入学。その後、就労するも就職先の社員寮で動かなくなっているところを発見され、会社は9か月でクビ。4年間の本格的なひきこもり時代に突入。
 その後、保健所の支援でひきこもりから脱出。2009年、保健師にとってまれにみる成功例として福岡県嘉穂・鞍手保健環境事務所の「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーに就任。自立できるほどの収入はないが、ひきこもり当事者家族の話を聴いて支援をすることになる。
 しかし、2020年に国や県がひきこもり当事者への就労支援を加速させることになり、「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーとしてのお役御免となる。
 「死んで地獄に行ったら、鬼に責め苦を喰らい、極楽に行っても悟った超阿弥陀如来に解脱するまで修行させられる」ことを恐れて、今日も何とか生き延びている。

2025/03/14

—ひきこもりサバイバー43 -みんなが気付かないひきこもりの人の親への気遣い-

  福岡県立大学で嗜癖行動学を研究している四戸智昭です。

ひきこもりからのサバイバー(生還者)の声に学ぶことが大切だと思い、元ひきこもりのこだまこうじさんにエッセイを書いてもらいました。随時掲載の予定です。
今回は、『あなたはひきこもりですか? それともひきこもり脱出者ですか?』というお話。

◆◆◆

ひきこもりの人も風邪をひきます。

 しかし病院にはいきません。

 ひきこもりの人が同居している親に対して 「こんなことになって迷惑をかけっぱなしだ」 と申し訳なく思っているからです。

 ひきこもっているということはそういう親への気遣いです。

 ただでさえ世話になっているのに病院代まで出させては申し訳ない。

 家にいれば風邪一つひかないなんてことはありません。

 ひきこもりの人が病院に行かないのは風邪をひいて熱が出てきつくても病院へいって親にお金を使わせることへの申し訳なさが勝つからです。

 ひきこもりの人がカウンセリングや心療内科への受診を拒むのも実は この親への気遣いが関係しています。

 一回だけでやめてしまうのは出ていく金額を知ってしまうからという一面があります。

 ゼロ円生活をしていた私は初診で一万円出払うとき手が震え、千円札一枚しかが返ってこなかったとき目の前が真っ暗になりまし た。

 あなたが自分の親が自分の治療費として1000万円払っているのを見たらどんな気持ちに なるでしょうか? 

大きな手術なら迷惑をかけると思いつつも目をつぶって感謝できるかもしれません。

しかし話を長くても30分話を聞かれた後、1000万円払わされている親を見て目をつぶることはできないのではないでしょうか?

「また来たらまた1000万円親に払わせることになる」

もしかしたら

「お母さんは騙されているのでは?」

そんな気持ちになるかもしれません。 

ここに来るたびに1000万円が失われる。

あなたは何回それに目をつぶれるでしょうか?

 そうを想像してもらえばひきこもりの人が一回で心療内科への通院をやめてしまう気持ちが わかるのではないでしょうか?

 コロナ禍でお家時間が増えるといつもと違った気づきが多いです。

 精神病にされたくないと「人と同じ」でいたいという気持ち、親の言うことを聞きたくないという気持ちも大きいのですが、その根底には親に対する気遣いがあるのです。

 私もひきこもっているとき足を怪我して靴下が真っ赤になるくらい血を流しても病院にはいきませんでしたよ。






こだまこうじ (元ひきこもり。1976年福岡県飯塚市生まれ、同市在住。)


<プロフィール>
 中学時代いじめ被害、高校で不登校に。その後、最初のひきこもり時代を経験。このとき、「キツイから精神科に連れて行って」と親に泣いて希望するも、完全に無視される。周囲から就労を強要され、専門学校へ入学。その後、就労するも就職先の社員寮で動かなくなっているところを発見され、会社は9か月でクビ。4年間の本格的なひきこもり時代に突入。
 その後、保健所の支援でひきこもりから脱出。2009年、保健師にとってまれにみる成功例として福岡県嘉穂・鞍手保健環境事務所の「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーに就任。自立できるほどの収入はないが、ひきこもり当事者家族の話を聴いて支援をすることになる。
 しかし、2020年に国や県がひきこもり当事者への就労支援を加速させることになり、「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーとしてのお役御免となる。
 「死んで地獄に行ったら、鬼に責め苦を喰らい、極楽に行っても悟った超阿弥陀如来に解脱するまで修行させられる」ことを恐れて、今日も何とか生き延びている。

2025/03/07

—ひきこもりサバイバー42 -ひきこもりの人は真面目なのになんでひきこもってしまうの?-

  福岡県立大学で嗜癖行動学を研究している四戸智昭です。

ひきこもりからのサバイバー(生還者)の声に学ぶことが大切だと思い、元ひきこもりのこだまこうじさんにエッセイを書いてもらいました。随時掲載の予定です。
今回は、『あなたはひきこもりですか? それともひきこもり脱出者ですか?』というお話。

◆◆◆

「それまで真面目に学校にいっていたのに急にひきこもって」 

 そんな声をよく聞きます。

 その理由を探してみんな頑張っています。

 しかしゆっくりと振り返るとその複雑な話を簡単に見ることも できることに気づきます。 

 小学校高学年でも中学校でも高校でも大学でも会社でもいいのですが そこで立ち止まってしまうひきこもりの人たちは単純に 「人と同じ」というワードに引っかかってしまったに過ぎないのでは ないでしょうか?

 あまり複雑に考えないので単純すぎる話になりますが 学校では全員同じ授業を受けます。 

 同じ時間同じ教科を勉強し、同じ時間体育で体を動かします。 得意不得意がでます。

 「人と同じように」できない。

 それぞれが違うことに気づきます。

 しかしテストの点数が悪ければ怒られ、良ければ褒められます。

 苦手な教科を得意な教科より多く勉強したいと思っても学校は決まった時間均等に授業を消化する場所なのでできません。

 真面目な子はここでつまずきます。

 ひきこもるほど真面目な子は「宿題を忘れる」ことでさえ「みんなできているのに」と思い、すごく落ち込みます。

 ひきこもる人にとって人と違うことは「悪いこと」です。

 毎日、学校で「人と同じ」時間割をこなしていれば自然とそうなります。

 体調が悪くても会社に行く社会人のように・・・

 休むと査定に響くんじゃないかと恐れる社会人のように・・・

 習慣は強い力を持っています。

 毎日やっていることが心地よく正しいことだと思ってしまいます。

 正しいことのはずだと信じてしまいます。

 「人と同じ」ことをしなくちゃいけないのに「人とは違う」。

 これは大きなつまずきどころです。

 小学校は住んでいる区域で決まり、中学校も普通はそう、高校生になるときに突然、いける高校リストから選ぶことになり、大学になると 人と同じ選択というのはかなり難しくなります。

 高校受験の時は私立と公立を十校以下の中から二つ選べばよかったのに、 大学になるとその数は788大学(旺文社 教育情報センター 2021 年 4 月 1 日)に増えます。

 学部とか考えるさらに選択肢が増えと選ぶだけでもとんでもないエネルギーが必要になります。

 さらに大学生から社会人になるときいきなり「自分の好きに選びなさい」と とんでもない難題が突き付けられます。 企業数だけでも3856457(統計局平成28年度調査)です。 

 小学生で「人と同じようにすること」つまりは「人並み」を見失って つまずいた人にはきつすぎる課題です。

 中学生でつまずいた人、高校でつまずいた人、大学でつまずいた人。

 どの段階の人でも怖くて逃げだしてしまいます。

 せめてひきこもった時点から社会人になった「人と同じ」ようにやらなかった中学高校時代の 勉強とその青春時間を補填してくれればいいのですがそれはなく、高校卒業認定試験で合格を勝ち取るぐらいの時間はあるのですが、本当の中学高校生活勉強力はつきません。

それをやらないので 「ひきこもりの人は人間関係が苦手だ」という面がサポートアプローチの最重要点となってしまいます。

 働きながら勉強する人は立派です。

 しかし彼ら彼女らは「人と違って」立派なのであって「人と同じ」を 目指すひきこもりの私たちにとっては参考にするべきお手本にはなりえない気がするのですがどうでしょうか?






こだまこうじ (元ひきこもり。1976年福岡県飯塚市生まれ、同市在住。)


<プロフィール>
 中学時代いじめ被害、高校で不登校に。その後、最初のひきこもり時代を経験。このとき、「キツイから精神科に連れて行って」と親に泣いて希望するも、完全に無視される。周囲から就労を強要され、専門学校へ入学。その後、就労するも就職先の社員寮で動かなくなっているところを発見され、会社は9か月でクビ。4年間の本格的なひきこもり時代に突入。
 その後、保健所の支援でひきこもりから脱出。2009年、保健師にとってまれにみる成功例として福岡県嘉穂・鞍手保健環境事務所の「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーに就任。自立できるほどの収入はないが、ひきこもり当事者家族の話を聴いて支援をすることになる。
 しかし、2020年に国や県がひきこもり当事者への就労支援を加速させることになり、「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーとしてのお役御免となる。
 「死んで地獄に行ったら、鬼に責め苦を喰らい、極楽に行っても悟った超阿弥陀如来に解脱するまで修行させられる」ことを恐れて、今日も何とか生き延びている。

2025/02/28

—ひきこもりサバイバー41 -自分が死んだらひきこもりの子どもがどうなるか心配なのは-

  福岡県立大学で嗜癖行動学を研究している四戸智昭です。

ひきこもりからのサバイバー(生還者)の声に学ぶことが大切だと思い、元ひきこもりのこだまこうじさんにエッセイを書いてもらいました。随時掲載の予定です。
今回は、『あなたはひきこもりですか? それともひきこもり脱出者ですか?』というお話。

◆◆◆

「私たちも歳でいつまでも面倒を見れるわけじゃないし」

 という声はとても切実に思えます。

 しかし子供の心配し続けるというのが親の親たるゆえんであることを考えるとその心配は親としての特権を強く行使できる状況にいるという贅沢にも思えます。

 普通に働いている子供だっていつ不幸に見舞われるかわかりません。

 子供の未来をきっちり予測することなどできることではありません。

 まして自分が死んだ後の未来まではとても無理です。

 予測できるならそれまでにちゃんと準備は完了しているはずです。

 それができていないのだから未来予測はあまり意味がありません。

 ちなみに今は大手企業のサラリーマンが一年後には失業しているなんてことも結構ありますし、最悪モラハラの餌食になって自殺してしまうこともあります。

 普通に家を出て働いている子供たちについても親は心配しているのです。

 会社ではうまくやっているだろうか?

 悪い遊びに誘われてはまって仕事をおろそかにしていないだろうか?

 そろそろ結婚しなくて大丈夫だろうか?

 相手はちゃんとした人だろうか?

 貯金はしないと家を建てるとき大変だけど毎月積み立てしてるだろうか?

 そろそろ子供をつくっておかないと出産が大変なのに大丈夫だろうか?

 ちゃんと子供のために進学資金は準備できているだろうか?

 などなど心配は尽きることがありません。

 自分たちがそういうことを親に言われたときは「いちいちうるさい」と 思っていたはずなのに親になったら手のひら返しです。

 ただこれは親の特権であり、子供を持った時に発動する本能で自然の摂理です。

 友達みたいな親子でも親は内心では子供を心配する特権を行使しています。

 「この子の人生だし何とかするでしょ」 と言いながらちゃんと自分で生命保険をかけて、ついでに貯金も残して死ぬ準備をしているのが日本の親です。

 「ずっと働かないでひきこもっているから」と心配している親は本質的には普通です。

 立派に親のつとめを果たし、親としてちゃんと心配しています。

 死んだ後のことも働いている子供の親以上に考え、準備できているはずです。

 あとは子供を心配する特権を行使しすぎないように気を付ければ親として完璧です。

 もっとも完ぺきではないのが人間のいいところで真剣にそれを満喫しているあなたは心配をやめることができないでしょう。

 ただひきこもりの親御さんに子供を心配するのは親として普通のことだと いうことだけは頭の真ん中においておいてほしいと思います。






こだまこうじ (元ひきこもり。1976年福岡県飯塚市生まれ、同市在住。)


<プロフィール>
 中学時代いじめ被害、高校で不登校に。その後、最初のひきこもり時代を経験。このとき、「キツイから精神科に連れて行って」と親に泣いて希望するも、完全に無視される。周囲から就労を強要され、専門学校へ入学。その後、就労するも就職先の社員寮で動かなくなっているところを発見され、会社は9か月でクビ。4年間の本格的なひきこもり時代に突入。
 その後、保健所の支援でひきこもりから脱出。2009年、保健師にとってまれにみる成功例として福岡県嘉穂・鞍手保健環境事務所の「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーに就任。自立できるほどの収入はないが、ひきこもり当事者家族の話を聴いて支援をすることになる。
 しかし、2020年に国や県がひきこもり当事者への就労支援を加速させることになり、「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーとしてのお役御免となる。
 「死んで地獄に行ったら、鬼に責め苦を喰らい、極楽に行っても悟った超阿弥陀如来に解脱するまで修行させられる」ことを恐れて、今日も何とか生き延びている。

2025/02/21

—ひきこもりサバイバー40 -ひきこもりの人をサポートする人は-

  福岡県立大学で嗜癖行動学を研究している四戸智昭です。

ひきこもりからのサバイバー(生還者)の声に学ぶことが大切だと思い、元ひきこもりのこだまこうじさんにエッセイを書いてもらいました。随時掲載の予定です。
今回は、『あなたはひきこもりですか? それともひきこもり脱出者ですか?』というお話。

◆◆◆

働くというのは「傍(はた)を楽にする」ことだという説があります。

ひきこもりの人をサポートしているあなたは楽をしていますか?

 当然、していないと思います。

 だってひきこもりの人を助けてあげられないのですから・・・

 ひきこもりの人に接すると普通の社会人の方は価値観の違いに 混乱し、立ちすくんでしまいます。

 怒りや不安、無力感に苛立ち、そして恐怖を感じます。

 「あのときもっと○○○○していれば」 そんな考えにとらわれ、どんどんつらくなっていきます。

 ひきこもりの人はサポートの人が当初想定していた範囲を圧倒的に外れてくるので対応に追われて疲れまてしまいます。

 「ちゃんと頑張って勉強したとおりに対応しているのに成果が出ない」 ことほどつらいことはありません。

 しかしこれは成果を「ひきこもりの人を社会復帰させる」というところに おいているがゆえに起こる疲れです。

 単純に「ひきこもり文化圏」と「会社的文化圏」の異文化交流だ!と考えればこの交流から何を得られるのかが焦点になって面白がることができます。

 異文化交流なので無理にこちらに従わせるのではなく、またこちらが従うのではなく、違いを話しあい、 お互いに認め合う。

 その先にどちらも疲れない道があるように思えます。

 ひきこもりの人から見たらあなたも傍(はた)=周りの人です。

 あるあなたがいろいろ抱え込んで疲れていたらひきこもりの人は今の自分を 肯定して先に進むより、否定して座り込むでしょう。

 周りも楽、自分も楽。 ウィンウインの関係が本当の働くです。

 私個人としてはサポーターの人にはこの交流を面白がり、二つの違う文化圏の中から新しい発見や交流の仕方を学んで新しいスタイルの社会を生み出す楽しみを経験してほしいと思っています。

昭和時代はバスに乗車拒否されていた車椅子の人がバスに乗れるようになったように、

年老いた親を人に預けて働くなんて人間じゃないと全否定していた社会がやや改善されたように、

社会制度は時代に合わせて変わっていくべきだと思います。






こだまこうじ (元ひきこもり。1976年福岡県飯塚市生まれ、同市在住。)


<プロフィール>
 中学時代いじめ被害、高校で不登校に。その後、最初のひきこもり時代を経験。このとき、「キツイから精神科に連れて行って」と親に泣いて希望するも、完全に無視される。周囲から就労を強要され、専門学校へ入学。その後、就労するも就職先の社員寮で動かなくなっているところを発見され、会社は9か月でクビ。4年間の本格的なひきこもり時代に突入。
 その後、保健所の支援でひきこもりから脱出。2009年、保健師にとってまれにみる成功例として福岡県嘉穂・鞍手保健環境事務所の「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーに就任。自立できるほどの収入はないが、ひきこもり当事者家族の話を聴いて支援をすることになる。
 しかし、2020年に国や県がひきこもり当事者への就労支援を加速させることになり、「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーとしてのお役御免となる。
 「死んで地獄に行ったら、鬼に責め苦を喰らい、極楽に行っても悟った超阿弥陀如来に解脱するまで修行させられる」ことを恐れて、今日も何とか生き延びている。

2025/02/14

—ひきこもりサバイバー39 -ひきこもりの人に本当に必要なサポートとは?-

  福岡県立大学で嗜癖行動学を研究している四戸智昭です。

ひきこもりからのサバイバー(生還者)の声に学ぶことが大切だと思い、元ひきこもりのこだまこうじさんにエッセイを書いてもらいました。随時掲載の予定です。
今回は、『あなたはひきこもりですか? それともひきこもり脱出者ですか?』というお話。

◆◆◆


「ひきこもっている人がどんな支援を求めているのか知りたい!」

 という声は困惑とともに発せられます。

 それはそれを発する人がきちんと人はそれぞれ違うことを理解しているからでしょう。

 だから迷い悩み頭を抱えるわけです。

 私としてもこんな場合はこうした方がいいのでは? というレベルでしか話はできません。 

 その根っこにあるのは何かと考えているとふと思考にひっかかったことがありました。

 それは「ひきこもりの人は真面目だ」ということです。

 私ですら 「いろんなことを真面目に考えすぎず、気楽に。きついときは休むように」と注意されまくるくらいです。

 ひきこもっている人はもっと真面目です。

 簡単に言えば「自分が好きなように遊ぶ」ことに罪悪感を覚えてしまいます。

 「気晴らしにどこかに行こう」 と誘われても心のどこかで 「何もしていない自分が遊ばせてもらうなんていけないことだ」 と思ってしまうわけです。

 つまりびっくりするくらい好き勝手に遊ぶことを許して真面目に ひきこもり続けていることを不真面目に遊ぶことで中和することが 必要なように思えます。

「仕事が片付いたらパーッとお祝いをやろう」 という考え方を 「パーッと遊んでから仕事にとりかかろう」 に変えると 「今働いてないから心配」が「今めちゃくちゃ遊んでるから大丈夫」に 変わるのではないでしょうか? 

 結局は仕事が片付いてパーッとお祝いをやったらそのお祝いのパワーが 次の仕事への活力になります。

 仕事→遊び→仕事→遊び→仕事のサイクルの遊びからスタートするわけです。

 昔も今も 「真面目な人は不真面目に不真面目な人は真面目に生きればちょうどよくなる」と言います。

 その意味では昔はやんちゃしてた人が大人になって真面目に働くようになることも昔から真面目一辺倒の人がひきこもってしまうのも当然なのかもしれません。

 ひきこもりの人へのサポートとはその真面目過ぎる思考と頑なな罪悪感をほぐしていくことにつきるのではないでしょうか?





こだまこうじ (元ひきこもり。1976年福岡県飯塚市生まれ、同市在住。)


<プロフィール>
 中学時代いじめ被害、高校で不登校に。その後、最初のひきこもり時代を経験。このとき、「キツイから精神科に連れて行って」と親に泣いて希望するも、完全に無視される。周囲から就労を強要され、専門学校へ入学。その後、就労するも就職先の社員寮で動かなくなっているところを発見され、会社は9か月でクビ。4年間の本格的なひきこもり時代に突入。
 その後、保健所の支援でひきこもりから脱出。2009年、保健師にとってまれにみる成功例として福岡県嘉穂・鞍手保健環境事務所の「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーに就任。自立できるほどの収入はないが、ひきこもり当事者家族の話を聴いて支援をすることになる。
 しかし、2020年に国や県がひきこもり当事者への就労支援を加速させることになり、「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーとしてのお役御免となる。
 「死んで地獄に行ったら、鬼に責め苦を喰らい、極楽に行っても悟った超阿弥陀如来に解脱するまで修行させられる」ことを恐れて、今日も何とか生き延びている。

2025/02/07

—ひきこもりサバイバー38 -ひきこもりは究極の自己管理術-

  福岡県立大学で嗜癖行動学を研究している四戸智昭です。

ひきこもりからのサバイバー(生還者)の声に学ぶことが大切だと思い、元ひきこもりのこだまこうじさんにエッセイを書いてもらいました。随時掲載の予定です。
今回は、『あなたはひきこもりですか? それともひきこもり脱出者ですか?』というお話。

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あなたは週に一日は休みがあるでしょうか?

 月に一日は休みがあるでしょうか?

 無くてもやっていけるでしょうか?

 過労で疲れた体に引っ張られて心を病んで自殺しないでしょうか?

 大丈夫な人は超人です。

 大丈夫でない人はとても真面目な人です。

 自殺してしまう人は助けてというと周りに迷惑がかかると思う優しい人です。

 ひきこもって命を守る人はとても心に素直な人です。

 しかもそれを何年も続けることができている人は極めて優れた自己管理能力のある人です。

 外に出て働くことが正しいという考え方が好きで体質にあっている人が毎日会社に行くことに苦痛を覚えないということならば別です。

 自分がよいと思う分野を毎日続けるのは当たり前だと言え実行している人はひきこもりの人と同じ立場なのでその大変さがわかるでしょう。

 しかし会社に行きながら休みを待ち望んでいる人はひきこもりの人に対して持続能力で負けています。

 自分が選んだ道を続ける力で負けています。

 コロナ禍でお家時間の過ごし方に困難を覚える社会があります。

 「苦手なことをやり続けること」は大変です。

 お家時間に苦戦した人は同じ苦労を、いや毎日ひきこもりを継続できている人たちはそれ以上の苦労を「お外時間の過ごし方」に感じることを考えてもらえれば幸いです。

 ひきこもりの人には休みなどないのですから。






こだまこうじ (元ひきこもり。1976年福岡県飯塚市生まれ、同市在住。)


<プロフィール>
 中学時代いじめ被害、高校で不登校に。その後、最初のひきこもり時代を経験。このとき、「キツイから精神科に連れて行って」と親に泣いて希望するも、完全に無視される。周囲から就労を強要され、専門学校へ入学。その後、就労するも就職先の社員寮で動かなくなっているところを発見され、会社は9か月でクビ。4年間の本格的なひきこもり時代に突入。
 その後、保健所の支援でひきこもりから脱出。2009年、保健師にとってまれにみる成功例として福岡県嘉穂・鞍手保健環境事務所の「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーに就任。自立できるほどの収入はないが、ひきこもり当事者家族の話を聴いて支援をすることになる。
 しかし、2020年に国や県がひきこもり当事者への就労支援を加速させることになり、「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーとしてのお役御免となる。
 「死んで地獄に行ったら、鬼に責め苦を喰らい、極楽に行っても悟った超阿弥陀如来に解脱するまで修行させられる」ことを恐れて、今日も何とか生き延びている。

2025/01/31

—ひきこもりサバイバー37 -ひきこもりの時間感覚-

  福岡県立大学で嗜癖行動学を研究している四戸智昭です。

ひきこもりからのサバイバー(生還者)の声に学ぶことが大切だと思い、元ひきこもりのこだまこうじさんにエッセイを書いてもらいました。随時掲載の予定です。
今回は、『あなたはひきこもりですか? それともひきこもり脱出者ですか?』というお話。

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「何年もひきこもっていて外に出ないんです」

 「何年もひきこもっていて平気なのでしょうか?」 

 ひきこもりの人に対する家族の言葉です。

 この時間感覚の話についてひきこもっていると生活に曜日感覚がないので時間への感覚が社会人の人とは違ってくるという一面があるという話をしたことがあると思います。

 月火水木金が終わってやっと休みゆっくりしよう。

 というような社会人の方が普通に感じているメリハリがないので休みを心待ちにするという意識が生まれず、時間感覚への関心が 鈍くなります。

 そしてもう一面。 強い不安ストレスを感じているのでそれと対峙することで 時間を短く感じているという面もあります。

私がある日、ぼんやりテレビを見ていると飛行機の墜落事故を回避したスタッフの話をやっていました。

その中で機長が胴体着陸をするかどうかを悩んでいると

「燃料があと十五分飛ぶ量しかありません」と副操縦士が声をかけ 

 「何だって、まだ一時間分は残っているはずだ」と驚くシーンが ありました。 

 機長は問題に集中するあまり、時間感覚への意識が 鈍くなっていたのだ! との解説がありました。

 調べてみると好きなことをしていると時間がたつのが早いのは 一つのことに集中しているためでその点では強いストレス下にいる人と同じ現象が脳内で起こっているということでした。

 そういえば私もひきこもっていた期間が4年間あったと言われて びっくりした記憶があります。

 不登校になったときも気づいたら「明日から学校いかないと卒業できない」という状態で包丁を握っていました。

それを考えると 年末にひきこもりの人に「今年でひきこもって二年目ね。ケーキ食べ ましょう」くらいは言った方がいいかもしれません。

 もちろん逃げる準備をして!

 私もひきこもり4年目の冬に弟が大雪の日に外にたたき出してくれなかったら 今もひきこもっていたことでしょう。

 二十一年前に三十年に一度の大雪が降ってくれて本当に運がよかったなぁと 今は思います。






こだまこうじ (元ひきこもり。1976年福岡県飯塚市生まれ、同市在住。)


<プロフィール>
 中学時代いじめ被害、高校で不登校に。その後、最初のひきこもり時代を経験。このとき、「キツイから精神科に連れて行って」と親に泣いて希望するも、完全に無視される。周囲から就労を強要され、専門学校へ入学。その後、就労するも就職先の社員寮で動かなくなっているところを発見され、会社は9か月でクビ。4年間の本格的なひきこもり時代に突入。
 その後、保健所の支援でひきこもりから脱出。2009年、保健師にとってまれにみる成功例として福岡県嘉穂・鞍手保健環境事務所の「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーに就任。自立できるほどの収入はないが、ひきこもり当事者家族の話を聴いて支援をすることになる。
 しかし、2020年に国や県がひきこもり当事者への就労支援を加速させることになり、「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーとしてのお役御免となる。
 「死んで地獄に行ったら、鬼に責め苦を喰らい、極楽に行っても悟った超阿弥陀如来に解脱するまで修行させられる」ことを恐れて、今日も何とか生き延びている。

2025/01/24

—ひきこもりサバイバー36 -ひきこもりの人は外に出た方がいいは間違いかも?-

  福岡県立大学で嗜癖行動学を研究している四戸智昭です。

ひきこもりからのサバイバー(生還者)の声に学ぶことが大切だと思い、元ひきこもりのこだまこうじさんにエッセイを書いてもらいました。随時掲載の予定です。
今回は、『あなたはひきこもりですか? それともひきこもり脱出者ですか?』というお話。

◆◆◆

ひきこもりの人は「このままでいい」といい、 社会人の人は「ひきこもっていて何が楽しいのか」 といいます。

 よくある話です。

そしてこれはそれぞれにとって当たり前の感覚です。

 誰だって「今の自分が間違っている」と思っていてはその世界のストレスに対抗できません。

 ひきこもりの人が「外に出て何が楽しいの?」と 聞いてきたときに「会社に行くことが楽しい」と 答えられなければ社会人の方は 「俺が会社で苦しんでいるのにひきこもりは 家で楽をしているからずるい、差別だ!」と机をたたいているようなものです。

 ひきこもりの人から見れば 「外に出続けたばっかりに可哀そう」としか感じられません。

 せめて 「働いてお金を稼げばこんな楽しいことができて 私はこのために働いている」 なら納得できなくもなさそうですが 「とにかく仕事につけ」 「外に出れば何かしていれば楽しいことがある」 ではひきこもりの人には響きません。

 実際にコロナ禍でのお家時間を楽しむのに四苦八苦している 社会人の人たちを見ると 

 「何かしてないとダメな体と心になってしまうのが仕事をするということなのかなぁ」

 と元ひきこもりとしてはちょっと怖くなってしまいます。

 休めない病気を蔓延させる。

 それが会社、学校という組織なのかもしれません。






こだまこうじ (元ひきこもり。1976年福岡県飯塚市生まれ、同市在住。)


<プロフィール>
 中学時代いじめ被害、高校で不登校に。その後、最初のひきこもり時代を経験。このとき、「キツイから精神科に連れて行って」と親に泣いて希望するも、完全に無視される。周囲から就労を強要され、専門学校へ入学。その後、就労するも就職先の社員寮で動かなくなっているところを発見され、会社は9か月でクビ。4年間の本格的なひきこもり時代に突入。
 その後、保健所の支援でひきこもりから脱出。2009年、保健師にとってまれにみる成功例として福岡県嘉穂・鞍手保健環境事務所の「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーに就任。自立できるほどの収入はないが、ひきこもり当事者家族の話を聴いて支援をすることになる。
 しかし、2020年に国や県がひきこもり当事者への就労支援を加速させることになり、「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーとしてのお役御免となる。
 「死んで地獄に行ったら、鬼に責め苦を喰らい、極楽に行っても悟った超阿弥陀如来に解脱するまで修行させられる」ことを恐れて、今日も何とか生き延びている。

2025/01/21

—ひきこもりサバイバー100 -気にしないと書いてはみたものの-

   福岡県立大学で嗜癖行動学を研究している四戸智昭です。

ひきこもりからのサバイバー(生還者)の声に学ぶことが大切だと思い、元ひきこもりのこだまこうじさんにエッセイを書いてもらいました。随時掲載の予定です。
今回は、『ひきこもりの継続を強力にする小さな成功体験』というお話。

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100回を書き出すのにスマホいじったり、無意味に水を飲みに行ったり、ごろごろしたりとすごく気にしています。

ひきこもり黄金時代はこんな感じだったなぁと懐かしく二十数年前を思い出しています。

あのころ、自分は何をしたかったのだろう?

何もしたくなかったんだなと素直に書いてしまいます。

今はどうかというと無理はしたくないんだと素直に書いてしまいます。

書いたことが実現することが結構あります。

「自分が決めて書いたんだからやらないと」と頑張ってしまうんですね。

正確には「やれる範囲は実現するけれどやれないところは実現しない」。

ここ一か月、ロト6&7を買い続けてみましたが一等も二等も三等も当たってません。

10枚×200×8と10枚×300×4で28000円も遣ってますが、かすりもしないとは・・・。

千円も当たらない。

それに対して一等は六百万分の一・・・。

雷に打たれて感電するより確率は高いのに当たらない。

というより雷に打たれる、交通事故にあうという確率と対比して分析しているサイトに宝くじで儲けようというのは「悪いこと」だというメッセージ性が垣間見えて面白かったです。

企業が成功する確率はといわれるとちょっとあれですが、
コアラのマーチに○○コアラが入っている確率、ハッピーターンにギザターンが入っている確率何かと比べられるとほんわかできるのにと思いました。

ともあれ100回目、明日から私は何をやるのでしょうか?

不安と期待で少しわくわくです。

100回目をアップしたことに意味があると感じ、すごい達成感があります。

PS:これを書き上げたのは実は2022年4月のこと、何と4年前だったりします。

ブログに入るためのメルアドを忘れていたわけです。

今は2026年お正月。急にここに入れたってことは何かあるかもしれません。
 












こだまこうじ (元ひきこもり。1976年福岡県飯塚市生まれ、同市在住。)


<プロフィール>
 中学時代いじめ被害、高校で不登校に。その後、最初のひきこもり時代を経験。このとき、「キツイから精神科に連れて行って」と親に泣いて希望するも、完全に無視される。周囲から就労を強要され、専門学校へ入学。その後、就労するも就職先の社員寮で動かなくなっているところを発見され、会社は9か月でクビ。4年間の本格的なひきこもり時代に突入。
 その後、保健所の支援でひきこもりから脱出。2009年、保健師にとってまれにみる成功例として福岡県嘉穂・鞍手保健環境事務所の「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーに就任。自立できるほどの収入はないが、ひきこもり当事者家族の話を聴いて支援をすることになる。
 しかし、2020年に国や県がひきこもり当事者への就労支援を加速させることになり、「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーとしてのお役御免となる。
 「死んで地獄に行ったら、鬼に責め苦を喰らい、極楽に行っても悟った超阿弥陀如来に解脱するまで修行させられる」ことを恐れて、今日も何とか生き延びている。