2026/06/12

—ひきこもりサバイバー107 -お礼のメールを-

 福岡県立大学で嗜癖行動学を研究している四戸智昭です。

ひきこもりからのサバイバー(生還者)の声に学ぶことが大切だと思い、元ひきこもりのこだまこうじさんにエッセイを書いてもらいました。随時掲載の予定です。
今回は、『ひきこもりの継続を強力にする小さな成功体験』というお話。

◆◆◆


支援していても手ごたえがない。

そんな話を社協の大浦さんとメールのやりとりで話していました。

手ごたえはなくても、母親を訪ねてきたお客さんがいきなり声をかけてきたら、ひきこもっている方は超ビビるので、手ごたえはなくても「効果は抜群だ!」みたいな話です。

私の「ひきこもって話ができないとありがたくてもお礼なんてできませんよ」というメールに「それでも何か反応があったらうれしい」と返信が来ました。

そのおかげで、二度目のひきこもり期間に、筑豊サテライトオフィスに電話して、ジョイフルでアイスとかケーキとかをおごってもらった事を思い出しました。

今考えるとよく自分から、電話したなぁと思いますが、それだけ追いつめられていたってことでしょう。

話だけでもと電話をしたら、家の前まで迎えに来てくれて、ジョイフルスイーツを食べさせてくれて、話も聞いてくれる。

ありがたい、とてもありがたい。

私はスイーツ系に弱いらしく、不安になるとスイーツ目当てで、メールをするようになりました。

一年ちょっと続いたと思います。

苦しい→サテライトにメール→スイーツ→ありがたい→安定みたいな支援を受けました。

これがあったので、生き延びたと思っているので、そのお礼のメールをすることにしました。

いや、めちゃくちゃ感謝していても、改めてお礼をするのは、けっこう恥ずかしいです。

ただせっかく話に出たので、悶えながらメールを送信。

すぐに返信が来ました。

「たびたび支援機関での講演など頑張っているようなので、今年は見守っていました」

それをみて、私は思いました。

ちゃんと調べてくれてありがたいなぁ。

そして

「そういえば去年って、何やったんだっけ?」

もともと人の顔とか名前を覚えるのは苦手ですし、記憶力はよろしくないので、ちょっと考えました。

ホントに何やってたっけ?

いや、そもそも今年って令和何年?

二三日後、

山田饅頭に、カカオ研究所、と思い出していくと、セブンイレブンのバレンタインフェアでちょっとお高いチョコレートを買ってもらって、ブラックコーヒー飲めないといって、イートインコーナーで書類の不備を訂正した記憶がよみがえってきました。

ふつうに社会人をやっているとわからないんですが、毎日、同じ部屋で、同じような行動をだけやっていると時間の経過とか記憶があいまいになってきます。

一年前も、十年前も、昨日も、ほぼ変わらないので、脳が記憶の更新をカットするのかもしれません。


同じ柄のシャツを何十枚も並べていれば、朝、なにを着るか悩む時間を節約できる。

そんな感じです。


こだまこうじ (元ひきこもり。1976年福岡県飯塚市生まれ、同市在住。)


<プロフィール>
 中学時代いじめ被害、高校で不登校に。その後、最初のひきこもり時代を経験。このとき、「キツイから精神科に連れて行って」と親に泣いて希望するも、完全に無視される。周囲から就労を強要され、専門学校へ入学。その後、就労するも就職先の社員寮で動かなくなっているところを発見され、会社は9か月でクビ。4年間の本格的なひきこもり時代に突入。
 その後、保健所の支援でひきこもりから脱出。2009年、保健師にとってまれにみる成功例として福岡県嘉穂・鞍手保健環境事務所の「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーに就任。自立できるほどの収入はないが、ひきこもり当事者家族の話を聴いて支援をすることになる。
 しかし、2020年に国や県がひきこもり当事者への就労支援を加速させることになり、「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーとしてのお役御免となる。
 「死んで地獄に行ったら、鬼に責め苦を喰らい、極楽に行っても悟った超阿弥陀如来に解脱するまで修行させられる」ことを恐れて、今日も何とか生き延びている。

2026/06/05

—ひきこもりサバイバー106 -胃が痛くなりました-

     福岡県立大学で嗜癖行動学を研究している四戸智昭です。

ひきこもりからのサバイバー(生還者)の声に学ぶことが大切だと思い、元ひきこもりのこだまこうじさんにエッセイを書いてもらいました。随時掲載の予定です。
今回は、『ひきこもりの継続を強力にする小さな成功体験』というお話。

◆◆◆

原稿内容をメールでやりとりするとき、胃が痛くなります。



緊張というのもあるのですが、単純にビジネスメールに慣れていないんです。

どのレベルでなれていないかと言うと、「メールを受け取ったら必ず返信する」がわからないレベルでできません。

なので、山下さんからメールが来るたびに、「こういう場合はどう返すんだっけ?」と調べます。

そして、メールを書いて、メールの自動修正機能に、「ご」が抜けているとか「は」が足りないとか赤線を付けられて、訂正します。

なんでこんなにできないのかと頭を抱えてしまいます。

しかし、よく考えたら、ビジネスメールって、私が就職した30年前くらいには失礼だとか言われていたんです。

私がひきこもって出てきたときも、まだスマホは誕生していませんでした。

ネット回線も、「ネットゲームをしたら破産する」レベルの高額商品だったはずです。

その後、私はビジネスメールが必要にならない裏道(?)を歩いてきました。

出来ないのは当たり前なんですね。

そんなことを考えていると、ひきこもり支援者の支援の手ごたえとひきこもっている私たちの支援への感想がズレるのも当たり前だなぁと思いました。

支援者はビジネスメール熟練者で、「すぐに返信、明確回答」が当たり前で、ひきこもりの私たちは「顔を合わさない、話しかけない」が当たり前のビジネスメール失礼派です。

どっちもが「当たり前」をやると、どっちも「違うんだよなぁ」となるのは「当たり前」です。

どっちが寄り添うにしても、大変です。



















こだまこうじ (元ひきこもり。1976年福岡県飯塚市生まれ、同市在住。)


<プロフィール>
 中学時代いじめ被害、高校で不登校に。その後、最初のひきこもり時代を経験。このとき、「キツイから精神科に連れて行って」と親に泣いて希望するも、完全に無視される。周囲から就労を強要され、専門学校へ入学。その後、就労するも就職先の社員寮で動かなくなっているところを発見され、会社は9か月でクビ。4年間の本格的なひきこもり時代に突入。
 その後、保健所の支援でひきこもりから脱出。2009年、保健師にとってまれにみる成功例として福岡県嘉穂・鞍手保健環境事務所の「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーに就任。自立できるほどの収入はないが、ひきこもり当事者家族の話を聴いて支援をすることになる。
 しかし、2020年に国や県がひきこもり当事者への就労支援を加速させることになり、「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーとしてのお役御免となる。
 「死んで地獄に行ったら、鬼に責め苦を喰らい、極楽に行っても悟った超阿弥陀如来に解脱するまで修行させられる」ことを恐れて、今日も何とか生き延びている。