2026/06/05

—ひきこもりサバイバー106 -胃が痛くなりました-

     福岡県立大学で嗜癖行動学を研究している四戸智昭です。

ひきこもりからのサバイバー(生還者)の声に学ぶことが大切だと思い、元ひきこもりのこだまこうじさんにエッセイを書いてもらいました。随時掲載の予定です。
今回は、『ひきこもりの継続を強力にする小さな成功体験』というお話。

◆◆◆

原稿内容をメールでやりとりするとき、胃が痛くなります。



緊張というのもあるのですが、単純にビジネスメールに慣れていないんです。

どのレベルでなれていないかと言うと、「メールを受け取ったら必ず返信する」がわからないレベルでできません。

なので、山下さんからメールが来るたびに、「こういう場合はどう返すんだっけ?」と調べます。

そして、メールを書いて、メールの自動修正機能に、「ご」が抜けているとか「は」が足りないとか赤線を付けられて、訂正します。

なんでこんなにできないのかと頭を抱えてしまいます。

しかし、よく考えたら、ビジネスメールって、私が就職した30年前くらいには失礼だとか言われていたんです。

私がひきこもって出てきたときも、まだスマホは誕生していませんでした。

ネット回線も、「ネットゲームをしたら破産する」レベルの高額商品だったはずです。

その後、私はビジネスメールが必要にならない裏道(?)を歩いてきました。

出来ないのは当たり前なんですね。

そんなことを考えていると、ひきこもり支援者の支援の手ごたえとひきこもっている私たちの支援への感想がズレるのも当たり前だなぁと思いました。

支援者はビジネスメール熟練者で、「すぐに返信、明確回答」が当たり前で、ひきこもりの私たちは「顔を合わさない、話しかけない」が当たり前のビジネスメール失礼派です。

どっちもが「当たり前」をやると、どっちも「違うんだよなぁ」となるのは「当たり前」です。

どっちが寄り添うにしても、大変です。



















こだまこうじ (元ひきこもり。1976年福岡県飯塚市生まれ、同市在住。)


<プロフィール>
 中学時代いじめ被害、高校で不登校に。その後、最初のひきこもり時代を経験。このとき、「キツイから精神科に連れて行って」と親に泣いて希望するも、完全に無視される。周囲から就労を強要され、専門学校へ入学。その後、就労するも就職先の社員寮で動かなくなっているところを発見され、会社は9か月でクビ。4年間の本格的なひきこもり時代に突入。
 その後、保健所の支援でひきこもりから脱出。2009年、保健師にとってまれにみる成功例として福岡県嘉穂・鞍手保健環境事務所の「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーに就任。自立できるほどの収入はないが、ひきこもり当事者家族の話を聴いて支援をすることになる。
 しかし、2020年に国や県がひきこもり当事者への就労支援を加速させることになり、「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーとしてのお役御免となる。
 「死んで地獄に行ったら、鬼に責め苦を喰らい、極楽に行っても悟った超阿弥陀如来に解脱するまで修行させられる」ことを恐れて、今日も何とか生き延びている。

2026/05/29

—ひきこもりサバイバー105 -写真という難敵-

   福岡県立大学で嗜癖行動学を研究している四戸智昭です。

ひきこもりからのサバイバー(生還者)の声に学ぶことが大切だと思い、元ひきこもりのこだまこうじさんにエッセイを書いてもらいました。随時掲載の予定です。
今回は、『ひきこもりの継続を強力にする小さな成功体験』というお話。

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第一回目の始まりに伴って、「写真」が必要になりました。

ちゃんとした写真というのは私にとって恐怖の対象です。なぜかというと「ちゃんとした格好をしなければ恥ずかしい」と思うからです。

簡単に言うと「ひきこもりがスーツなんか持ってるわけがない!!」ってことです。

ひきこもりな私は、「ふつう」との価値観のズレがすごくて「ふつう」にはついて行けないなと思うことが多かったりします。

「無料就職訓練講座——スーツでお越しください」みたいなやつをみると「無料就職訓練講座——スーツ持っていない人はお断り」に見えてしまいます。

無料サポート講座でも「講座中はワイシャツでいいですよ(にっこり)」と言われると「うわぁ、ワイシャツ買うお金ないわー」とドン引きしてしまいます。

ふつうに「いやお金ないんです。スーツ代がでないんです」がめちゃくちゃ恥ずかしいんですよね。

だから、すごくそういう場に抵抗感を出してしまいます。

ともあれ――

そんなこんなで私は「どうしよう」と頭を抱えました。

かなり悩んだのですが、山下さんなので、頼っていいかなぁと思いました。

私は「たぶんスーツを持っていない方が不思議と思われるんだろうなぁ」とか思いつつも「写真の費用とか教えてください」とメールしました。

やっぱり、「スーツ持ってないんです」とストレートには言えませんでした。

「ふつう」の人からしたら常識外れもいいところなので、カジュアルファッションと言われたら「スーツでいいか」とか思うのがふつうだと私は思ってしまっています。

メールしたら、「部屋でスマホで自撮りでもいいですよ」との答えが、助かる!!

そんなこんなで完成したのが、第一回目に掲載されたスマホでの自撮り写真だったりします。

ほんとうは「ほほえんでいるバージョン」も撮ったのですが、どうしても笑えないんですよね。
何回撮っても、ビビッて口がひきつっている写真しかとれませんでした。ボツです。(一応送った)














こだまこうじ (元ひきこもり。1976年福岡県飯塚市生まれ、同市在住。)


<プロフィール>
 中学時代いじめ被害、高校で不登校に。その後、最初のひきこもり時代を経験。このとき、「キツイから精神科に連れて行って」と親に泣いて希望するも、完全に無視される。周囲から就労を強要され、専門学校へ入学。その後、就労するも就職先の社員寮で動かなくなっているところを発見され、会社は9か月でクビ。4年間の本格的なひきこもり時代に突入。
 その後、保健所の支援でひきこもりから脱出。2009年、保健師にとってまれにみる成功例として福岡県嘉穂・鞍手保健環境事務所の「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーに就任。自立できるほどの収入はないが、ひきこもり当事者家族の話を聴いて支援をすることになる。
 しかし、2020年に国や県がひきこもり当事者への就労支援を加速させることになり、「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーとしてのお役御免となる。
 「死んで地獄に行ったら、鬼に責め苦を喰らい、極楽に行っても悟った超阿弥陀如来に解脱するまで修行させられる」ことを恐れて、今日も何とか生き延びている。