2025/04/25

—ひきこもりサバイバー49 -ひきこもりの人にはわからない緩急-

  福岡県立大学で嗜癖行動学を研究している四戸智昭です。

ひきこもりからのサバイバー(生還者)の声に学ぶことが大切だと思い、元ひきこもりのこだまこうじさんにエッセイを書いてもらいました。随時掲載の予定です。
今回は、『あなたはひきこもりですか? それともひきこもり脱出者ですか?』というお話。

◆◆◆

あなたは休みの日何をしていますか?

 仕事中に手を休めることができますか?

 今回は普通の人は意識せずできていてひきこもりの人には できていない緩急についてのお話です。

 動いて休む。 当たり前のことですよね。

 会社にいる間、雑談の一つ、コーヒーの一杯も飲む時間さえ節約して机から仕事から離れない人はいないと思います。

 働く中にも集中する部分とゆっくりする部分を使い分けているわけです。

 それに対してひきこもりの人はこれが苦手です。

 集中していて疲れてきても 「そろそろゆっくりしようか」 ということを自分に許し実行することに罪悪感を感じます。

 また頑張りすぎている自分にもイライラしています。

 たとえるならば

 160キロの球を投げるけどストレートしか投げないピッチャー。

 パスを出さずにボールを持ち続けるサッカー選手。

 一人でドリブルしてシュートしてリバウンドとるバスケットボール選手。

 レシーブ、トス、スパイクを一人でやっちゃうバレーボール選手。

 野球では球種がないので不利になり、サッカーやバスケットボールでは運動量がすごいのにそれをずっと一人でやるのは自殺行為です。

 最後のバレーボールに至っては反則です。

 つまりひきこもりの人が疲れてしまうのはパスを出すことを不真面目と思ってしまうからなのです。

 仕事中はずっと机に張り付いて、あるいはラインに張り付いていないとと考えてしまいます。

 今まで働けてないのだから頑張らないと「ダメだ」という気持ちが強いのです。

 親御さんならひきこもりの人が学校に行っていたころとても真面目だったことをご存じだと思います。

 不登校になる前は無遅刻無欠席だったというように。

 ひきこもりの人はゆっくり休むことが苦手です。

 根が真面目なので休むにしても「頑張って休んで」しまいます。

 もちろんそのあと「頑張って働いて」しまいます。

 いつも全集中です。

 ちなみにこの「全集中」は「鬼滅の刃」という作品の身体能力をあげる 特殊な呼吸法を常に続けることを指しています。

 肺を酷使して呼吸し、体温を39度近くまであげることで人間離れした身体能力を得ます。 

 それを超えると体にあざが浮かび上がり、体がボロボロになっても動き続けることができます。

 その先に行きつくのは・・・

 ひきこもりの人は「全集中の呼吸」をやめるタイミングを体験する必要があります。

 自分がボロボロに傷ついていることに気づいて「全集中」をやめても大丈夫と自分で自分を抱きしめて教えてあげましょう。

 無理をしても周りを心配させるだけです。

 周りの人はひきこもりの人の頑張っている部分ではなく、

 「頑張っていない=リラックスしている」

 部分に目を向けましょう。

 それこそがひきこもりの人の最も苦手な部分で伸びしろなのです。

 もっともそれを見守っている親御さんの方がリラックスすることが悪いことだと頑張りすぎていることも多いです。

 ひきこもりの人をリラックスさせる第一歩は親が本気で

「なんとかなるなる」

 「ケセラセラ なるようになる」

の心を心掛けることかもしれません。




こだまこうじ (元ひきこもり。1976年福岡県飯塚市生まれ、同市在住。)


<プロフィール>
 中学時代いじめ被害、高校で不登校に。その後、最初のひきこもり時代を経験。このとき、「キツイから精神科に連れて行って」と親に泣いて希望するも、完全に無視される。周囲から就労を強要され、専門学校へ入学。その後、就労するも就職先の社員寮で動かなくなっているところを発見され、会社は9か月でクビ。4年間の本格的なひきこもり時代に突入。
 その後、保健所の支援でひきこもりから脱出。2009年、保健師にとってまれにみる成功例として福岡県嘉穂・鞍手保健環境事務所の「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーに就任。自立できるほどの収入はないが、ひきこもり当事者家族の話を聴いて支援をすることになる。
 しかし、2020年に国や県がひきこもり当事者への就労支援を加速させることになり、「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーとしてのお役御免となる。
 「死んで地獄に行ったら、鬼に責め苦を喰らい、極楽に行っても悟った超阿弥陀如来に解脱するまで修行させられる」ことを恐れて、今日も何とか生き延びている。

2025/04/18

—ひきこもりサバイバー48 -ひきこもり業界再編!-

  福岡県立大学で嗜癖行動学を研究している四戸智昭です。

ひきこもりからのサバイバー(生還者)の声に学ぶことが大切だと思い、元ひきこもりのこだまこうじさんにエッセイを書いてもらいました。随時掲載の予定です。
今回は、『あなたはひきこもりですか? それともひきこもり脱出者ですか?』というお話。

◆◆◆


今、ひきこもり業界再編の動きがあるのはご存じだと思います。

 友好的M&Aで国が県主導でサポート体制の構築を頑張ってしています。

 いつ倒れるかわからないと思いながらも四苦八苦を乗り越えてがんばっている個人事業主のお店に就職するより大きな企業に就職した方が安心安全と思う心は当たり前です。

 個人事業主で頑張っていた人が大企業の社員としてひきこもり脱出ノウハウに集中していけるといいなと思っています。

 資金繰りが可決すれば新しいこともできるでしょう。

 あなたの街にも公的機関としての無料ひきこもり相談窓口が実現するかもしれません。

 できるといいなと思いつつ、私はコロナワクチン一回目の接種が終わってぼんやりしています。 

 発症率50%の頭痛の上乗せを引き当てて、肩が長らくなってない筋肉痛で大変です。 

 自粛期間でみんなが何かを学び考えました。

 これからのひきこもり業界に期待しましょう。

 お家時間大変だった連合の一員としてぜひともご協力を! 

 体調が悪いとテンションがおかしなことになりますね。




こだまこうじ (元ひきこもり。1976年福岡県飯塚市生まれ、同市在住。)


<プロフィール>
 中学時代いじめ被害、高校で不登校に。その後、最初のひきこもり時代を経験。このとき、「キツイから精神科に連れて行って」と親に泣いて希望するも、完全に無視される。周囲から就労を強要され、専門学校へ入学。その後、就労するも就職先の社員寮で動かなくなっているところを発見され、会社は9か月でクビ。4年間の本格的なひきこもり時代に突入。
 その後、保健所の支援でひきこもりから脱出。2009年、保健師にとってまれにみる成功例として福岡県嘉穂・鞍手保健環境事務所の「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーに就任。自立できるほどの収入はないが、ひきこもり当事者家族の話を聴いて支援をすることになる。
 しかし、2020年に国や県がひきこもり当事者への就労支援を加速させることになり、「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーとしてのお役御免となる。
 「死んで地獄に行ったら、鬼に責め苦を喰らい、極楽に行っても悟った超阿弥陀如来に解脱するまで修行させられる」ことを恐れて、今日も何とか生き延びている。

2025/04/11

—ひきこもりサバイバー47 -スマホを踏んだひきこもり-

  福岡県立大学で嗜癖行動学を研究している四戸智昭です。

ひきこもりからのサバイバー(生還者)の声に学ぶことが大切だと思い、元ひきこもりのこだまこうじさんにエッセイを書いてもらいました。随時掲載の予定です。
今回は、『あなたはひきこもりですか? それともひきこもり脱出者ですか?』というお話。

◆◆◆

ごろんと寝返りを打ったらスマホに手が当たった。

ベッドに 座ったときにスマホがお尻の下にあった。

 なんてことはないでしょうか?

 私はひきこもっていたので携帯時代に乗り遅れ、ずっと無手で過ごしていました。

 スマホを買ったきっかけは

 「ひきこもっている息子にスマホを買ってあげたのにその日に使わないからと 言われた。スマホで外につながってくれたらと思っただけなのに」 

 という相談を受けたからでした。

 私は「ひきこもっている人にスマホ渡してもコミュニケーションをとる 相手なんていませんよ。普通の反応だと思います」と返事をしました。

 特に今まで話もできなかった親からスマホを渡されるとひきこもりの人はそれで私たちと話をしなさいとの圧すら感じてしまいます。

 それを伝えたのですが自分が持っていないのに言うのは違うと思ったのですぐにアップルストアで購入しました。

 そして使い方がわからなかった話はどこかでしたと思います。

 ともあれ面と向かっては話せなくてもスマホでなら親などととやりとりができるという例があるというのは 選択肢が増えていいと思います。

 しかしこれは記録的な興行収入を出したとか大ヒットした作品のように 「すごく珍しい状況がニュースになる」 ということと同じで常に起こること、起こりやすいことではありません。

 あなたも珍しいことは人に話したくなりますよね。

 そして話しているうちにそれが当たり前のことだったように感じてしまいます。

 「あの作品はあれだけ有名なんだから素晴らしいに違いない、みんな知っている、使っているに違いない」

 という意識で生活して実はそれをニュースで聞いていても見ていなかったり、 使っていなかったりする人の方が多いことを忘れてしまいます。

 戦場に一人取り残された兵士に通信機だけ届けて 

 「私たちにできることはこれだけだ」

 「わかりました。全力を尽くして帰還します!」

 で生還する話は映画です。

 ただこれが実話をもとにした映画なのも確かなのです。

私は 今、買ったときはちゃんと箱に入れて机の上に置いていたスマホを床に放り出して充電していて踏んだ瞬間に そんなことを考えました。

 国や県が「ひきこもり対策はこれ」と決めたときはともかくその後、 それに慣れていくと怖いことになるのではないかと思ってしまいました。

 今まで大切にしていたスマホをたった一年後には踏んでもそんなに気にしなくなってしまうように。





こだまこうじ (元ひきこもり。1976年福岡県飯塚市生まれ、同市在住。)


<プロフィール>
 中学時代いじめ被害、高校で不登校に。その後、最初のひきこもり時代を経験。このとき、「キツイから精神科に連れて行って」と親に泣いて希望するも、完全に無視される。周囲から就労を強要され、専門学校へ入学。その後、就労するも就職先の社員寮で動かなくなっているところを発見され、会社は9か月でクビ。4年間の本格的なひきこもり時代に突入。
 その後、保健所の支援でひきこもりから脱出。2009年、保健師にとってまれにみる成功例として福岡県嘉穂・鞍手保健環境事務所の「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーに就任。自立できるほどの収入はないが、ひきこもり当事者家族の話を聴いて支援をすることになる。
 しかし、2020年に国や県がひきこもり当事者への就労支援を加速させることになり、「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーとしてのお役御免となる。
 「死んで地獄に行ったら、鬼に責め苦を喰らい、極楽に行っても悟った超阿弥陀如来に解脱するまで修行させられる」ことを恐れて、今日も何とか生き延びている。

2025/04/04

—ひきこもりサバイバー46 -そして「ひきこもり」へ-

  福岡県立大学で嗜癖行動学を研究している四戸智昭です。

ひきこもりからのサバイバー(生還者)の声に学ぶことが大切だと思い、元ひきこもりのこだまこうじさんにエッセイを書いてもらいました。随時掲載の予定です。
今回は、『あなたはひきこもりですか? それともひきこもり脱出者ですか?』というお話。

◆◆◆

あなたにとって「ひきこもり」とははなんでしょうか?

 登校拒否もとい不登校に当てはまらなくても三日子供が学校に行きたくないと言続ければもはやそれは「ひきこもり」への心配につながります。

 「ひきこもり」になってからでは遅い!

 そんな気持ちがあるのではないでしょうか?

 そして厚生労働省のひきこもりの定義に当てはまって相談に行くと 

「もっと早く相談に行けばよかった」 と思い、

 「どうして三日目に今の対応をしてくれなかったのか!」 と憤りを感じるでしょう。 

 そこには「ひきこもり」という言葉が医学的には新語であり、 弊害も知られていなかったので調査をやることも大変だったという 歴史があります。

 ほんの三十年ほど前まで 「ひきこもり」は「閉じこもり」でした。

 「閉じこもり」からも 「自分の意志で社会から避難している」 という意味合いは感じられますが語感としてはニュースで使われる

 「犯人は人質を取って立てこもっています」

 「ジャンボ機の中に閉じ込めらた人たちは」

 「炎天下の中水も与えられず屋外の物置の中に閉じ込められ」

 といった事件性のある言葉を私は感じてしまいます。

 一方で「ひきこもり」というと事件性がある表現とは無縁なので ソフトで受け入れやすいと言えます。

 実体の表現としても「閉じこもり」より「ひきこもり」の方が優れていると 私は感じます。 

 斎藤環先生という方が頭をひねって「閉じこもり」から「ひきこもり」という言葉をひねり出したもののそれが一般化するまではすごく長くかかりました。

 当時の高校生が五十になるくらいの時間がかかりました。

 芸能人とかが「ふだんは家にひきこもってゲームばっかりしてます」などとテレビで言っているのを聞くとひきこもりという言葉の柔らかさ、秀逸さとともに言葉が定着するには時間がかかるなぁとしみじみ思います。

 ただコロナ禍で世界が大混乱に陥っている様子を見るとそれも当然かなとも思います。

 コロナ発生、注意喚起、自粛、新株登場、感染拡大、ワクチンとかかったら死ぬかもしれ ない病気でさえ、その実態を見極め対応するまでに大変な時間資源を突っ込んでまだまだという感じです。

 2003年にSARSで大混乱に陥って18年後に同じような状況に対処するのが難しいように、ひきこもりが一般に認知された時期を考えるとひきこもり理解と解決には まだまだ時間がかかりそうです。

 ライトノベルや漫画、アニメ、ドラマなどにより「ひきこもり」というキャッチ―なキャラクター性が定着したおかげで「閉じこもり」のころより事件性が感じられなくなり、ひきこもりの人が発言しやすくなったおかげで

 昔あった「家に閉じこもっている成人」=「事件を起こすかもしれない危険人物」 という構図は崩れつつあります。

 そしてコロナ禍の「お家時間体験」により、それは加速していくでしょう。

 ひきこもりという言葉を作ってくれた斎藤環先生に感謝です。






こだまこうじ (元ひきこもり。1976年福岡県飯塚市生まれ、同市在住。)


<プロフィール>
 中学時代いじめ被害、高校で不登校に。その後、最初のひきこもり時代を経験。このとき、「キツイから精神科に連れて行って」と親に泣いて希望するも、完全に無視される。周囲から就労を強要され、専門学校へ入学。その後、就労するも就職先の社員寮で動かなくなっているところを発見され、会社は9か月でクビ。4年間の本格的なひきこもり時代に突入。
 その後、保健所の支援でひきこもりから脱出。2009年、保健師にとってまれにみる成功例として福岡県嘉穂・鞍手保健環境事務所の「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーに就任。自立できるほどの収入はないが、ひきこもり当事者家族の話を聴いて支援をすることになる。
 しかし、2020年に国や県がひきこもり当事者への就労支援を加速させることになり、「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーとしてのお役御免となる。
 「死んで地獄に行ったら、鬼に責め苦を喰らい、極楽に行っても悟った超阿弥陀如来に解脱するまで修行させられる」ことを恐れて、今日も何とか生き延びている。