福岡県立大学で嗜癖行動学を研究している四戸智昭です。
ひきこもりからのサバイバー(生還者)の声に学ぶことが大切だと思い、元ひきこもりのこだまこうじさんにエッセイを書いてもらいました。随時掲載の予定です。
今回は、『ひきこもりの継続を強力にする小さな成功体験』というお話。
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猫カフェ営業日当日、私はだるくて動けませんでした。
仏にお茶をあげた後、疲れて眠ってしまったようです。
理由は「明日、猫カフェ開いてるんだ」「行かないと」「行くべきだ」と頭の中で思考の量産サイクルが発動してよく眠れなかったからです。
時間は午後2時をすぎています。
このときふと「もう午後2時だから」という行かない理由が強烈にアピールしてきます。
食事の時間を考えると自転車の移動時間だけでも猫カフェ到着まで20分はかかり、30分滞在して午後4時に家に帰りつくことは難しいし、きついよと心が訴えかけてきます。
しかし「行けるよ」派がいいます。
「昼から今まで時間が過ぎたのは何もせずに頭を抱えていたからだろう」
「最近はちゃんと自転車こげるようになったから大丈夫、それに猫カフェに30分もいなくていいじゃないか」
はっきり文章にしてみると「行ける派」の理由の方があいまいでテキトーです。
テキトーで気楽です。
簡単に言えば「べし」「しなければならない」というルールや自分の力のなさを軽く見ています。
結果どうなったかというと「考えても時間がたつだけだから自転車にまたがってみよう」。
「どうせ仕事してないし、明日は休みなんだ」
「猫カフェに行くか行かないか悩んで眠れない今日を繰り返すのはめんどくさい」
そして「私は運がいいから何とかなる」
「何とかならなかったときは帰りが遅いと怒られるだけ」
「何だったらいっそ親をイライラさせて気晴らしするか」
「パチンコで大負けしたからとか言ってダメさを知ってもらう機会なのでは?」
「とりあえず一歩外に出よう」
こうして私は午後4時までしか開いていない猫カフェに午後2時半くらい(さらに悩んだ(笑))に出発しました。
こだまこうじ (元ひきこもり。1976年福岡県飯塚市生まれ、同市在住。)
<プロフィール> 中学時代いじめ被害、高校で不登校に。その後、最初のひきこもり時代を経験。このとき、「キツイから精神科に連れて行って」と親に泣いて希望するも、完全に無視される。周囲から就労を強要され、専門学校へ入学。その後、就労するも就職先の社員寮で動かなくなっているところを発見され、会社は9か月でクビ。4年間の本格的なひきこもり時代に突入。 その後、保健所の支援でひきこもりから脱出。2009年、保健師にとってまれにみる成功例として福岡県嘉穂・鞍手保健環境事務所の「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーに就任。自立できるほどの収入はないが、ひきこもり当事者家族の話を聴いて支援をすることになる。 しかし、2020年に国や県がひきこもり当事者への就労支援を加速させることになり、「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーとしてのお役御免となる。 「死んで地獄に行ったら、鬼に責め苦を喰らい、極楽に行っても悟った超阿弥陀如来に解脱するまで修行させられる」ことを恐れて、今日も何とか生き延びている。 |
