2025/04/04

—ひきこもりサバイバー46 -そして「ひきこもり」へ-

  福岡県立大学で嗜癖行動学を研究している四戸智昭です。

ひきこもりからのサバイバー(生還者)の声に学ぶことが大切だと思い、元ひきこもりのこだまこうじさんにエッセイを書いてもらいました。随時掲載の予定です。
今回は、『あなたはひきこもりですか? それともひきこもり脱出者ですか?』というお話。

◆◆◆

あなたにとって「ひきこもり」とははなんでしょうか?

 登校拒否もとい不登校に当てはまらなくても三日子供が学校に行きたくないと言続ければもはやそれは「ひきこもり」への心配につながります。

 「ひきこもり」になってからでは遅い!

 そんな気持ちがあるのではないでしょうか?

 そして厚生労働省のひきこもりの定義に当てはまって相談に行くと 

「もっと早く相談に行けばよかった」 と思い、

 「どうして三日目に今の対応をしてくれなかったのか!」 と憤りを感じるでしょう。 

 そこには「ひきこもり」という言葉が医学的には新語であり、 弊害も知られていなかったので調査をやることも大変だったという 歴史があります。

 ほんの三十年ほど前まで 「ひきこもり」は「閉じこもり」でした。

 「閉じこもり」からも 「自分の意志で社会から避難している」 という意味合いは感じられますが語感としてはニュースで使われる

 「犯人は人質を取って立てこもっています」

 「ジャンボ機の中に閉じ込めらた人たちは」

 「炎天下の中水も与えられず屋外の物置の中に閉じ込められ」

 といった事件性のある言葉を私は感じてしまいます。

 一方で「ひきこもり」というと事件性がある表現とは無縁なので ソフトで受け入れやすいと言えます。

 実体の表現としても「閉じこもり」より「ひきこもり」の方が優れていると 私は感じます。 

 斎藤環先生という方が頭をひねって「閉じこもり」から「ひきこもり」という言葉をひねり出したもののそれが一般化するまではすごく長くかかりました。

 当時の高校生が五十になるくらいの時間がかかりました。

 芸能人とかが「ふだんは家にひきこもってゲームばっかりしてます」などとテレビで言っているのを聞くとひきこもりという言葉の柔らかさ、秀逸さとともに言葉が定着するには時間がかかるなぁとしみじみ思います。

 ただコロナ禍で世界が大混乱に陥っている様子を見るとそれも当然かなとも思います。

 コロナ発生、注意喚起、自粛、新株登場、感染拡大、ワクチンとかかったら死ぬかもしれ ない病気でさえ、その実態を見極め対応するまでに大変な時間資源を突っ込んでまだまだという感じです。

 2003年にSARSで大混乱に陥って18年後に同じような状況に対処するのが難しいように、ひきこもりが一般に認知された時期を考えるとひきこもり理解と解決には まだまだ時間がかかりそうです。

 ライトノベルや漫画、アニメ、ドラマなどにより「ひきこもり」というキャッチ―なキャラクター性が定着したおかげで「閉じこもり」のころより事件性が感じられなくなり、ひきこもりの人が発言しやすくなったおかげで

 昔あった「家に閉じこもっている成人」=「事件を起こすかもしれない危険人物」 という構図は崩れつつあります。

 そしてコロナ禍の「お家時間体験」により、それは加速していくでしょう。

 ひきこもりという言葉を作ってくれた斎藤環先生に感謝です。






こだまこうじ (元ひきこもり。1976年福岡県飯塚市生まれ、同市在住。)


<プロフィール>
 中学時代いじめ被害、高校で不登校に。その後、最初のひきこもり時代を経験。このとき、「キツイから精神科に連れて行って」と親に泣いて希望するも、完全に無視される。周囲から就労を強要され、専門学校へ入学。その後、就労するも就職先の社員寮で動かなくなっているところを発見され、会社は9か月でクビ。4年間の本格的なひきこもり時代に突入。
 その後、保健所の支援でひきこもりから脱出。2009年、保健師にとってまれにみる成功例として福岡県嘉穂・鞍手保健環境事務所の「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーに就任。自立できるほどの収入はないが、ひきこもり当事者家族の話を聴いて支援をすることになる。
 しかし、2020年に国や県がひきこもり当事者への就労支援を加速させることになり、「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーとしてのお役御免となる。
 「死んで地獄に行ったら、鬼に責め苦を喰らい、極楽に行っても悟った超阿弥陀如来に解脱するまで修行させられる」ことを恐れて、今日も何とか生き延びている。

2025/03/28

—ひきこもりサバイバー45 -私が思う世間のひきこもりの定義とは?-

  福岡県立大学で嗜癖行動学を研究している四戸智昭です。

ひきこもりからのサバイバー(生還者)の声に学ぶことが大切だと思い、元ひきこもりのこだまこうじさんにエッセイを書いてもらいました。随時掲載の予定です。
今回は、『あなたはひきこもりですか? それともひきこもり脱出者ですか?』というお話。

◆◆◆

あなたはひきこもりと聞いてどんなイメージを持つでしょうか?

 部屋から出ない?

 家から出ない?

 それとも会社に行ったり学校へ行ったりしない?

 サポート施設には通うけれどそれ以上の進展がない?

 私の感覚としては 「みんなが仕事をしているのに、学校に行っているのに あなたはそれをしていない」という感覚が今の世間の人のひきこもりの定義のように感じられます。

 簡単に言えば仕事がめちゃくちゃ楽しくてめちゃくちゃ充実していて 

 「一生懸命働くことでこんなにも人生は豊かで幸せなのにそれを体験しない なんてもったいない!!」

と思ってくれているんだろうなぁと感じるわけです。

 テレビなんかで「仕事ないときは家に引きこもって出かけたりしないんですよ」と 芸能人の人が言っているのを見ても「ひきこもっている」ことは 楽しくて充実している人生を無駄にしてるという感覚があることがわかります。

 そう考えるとひきこもりをサポートする皆さんが外に出ることを進める理由は外の方が幸せだという確固たる意志によるものだとわかります。

 ちゃんと「人並みに」幸せになりたいな。

 そんなことを思う今日この頃でした。






こだまこうじ (元ひきこもり。1976年福岡県飯塚市生まれ、同市在住。)


<プロフィール>
 中学時代いじめ被害、高校で不登校に。その後、最初のひきこもり時代を経験。このとき、「キツイから精神科に連れて行って」と親に泣いて希望するも、完全に無視される。周囲から就労を強要され、専門学校へ入学。その後、就労するも就職先の社員寮で動かなくなっているところを発見され、会社は9か月でクビ。4年間の本格的なひきこもり時代に突入。
 その後、保健所の支援でひきこもりから脱出。2009年、保健師にとってまれにみる成功例として福岡県嘉穂・鞍手保健環境事務所の「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーに就任。自立できるほどの収入はないが、ひきこもり当事者家族の話を聴いて支援をすることになる。
 しかし、2020年に国や県がひきこもり当事者への就労支援を加速させることになり、「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーとしてのお役御免となる。
 「死んで地獄に行ったら、鬼に責め苦を喰らい、極楽に行っても悟った超阿弥陀如来に解脱するまで修行させられる」ことを恐れて、今日も何とか生き延びている。