福岡県立大学で嗜癖行動学を研究している四戸智昭です。
ひきこもりからのサバイバー(生還者)の声に学ぶことが大切だと思い、元ひきこもりのこだまこうじさんにエッセイを書いてもらいました。随時掲載の予定です。
今回は、『ひきこもりの継続を強力にする小さな成功体験』というお話。
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フィットボクシング2のふつうをやりきることができるようになりました。
表示で月に7000キロカロリー消費の有酸素運動です。
達成感があります。
これをちゃんと続けていけば健康に。
そんなことを思っていたのですがちょっとこう思ってしまいました。
「ふつう」より15分長い「おもい」にしてみたらどうなるだろうと。
結果はご想像の通り、さんざんな結果でした。
いままでのように眠れなくなり、朝になると頭痛がして一日中だるさが続きます。
それでも消費カロリーを気にして月7000キロカロリーは達成したのですがこのとき私はなぜ急に体も心も疲れてきたのかを自覚していませんでした。
そしてある日、ついに「さぼり」ました。
それでも次の日には「おもい」をやります。
やって、できなくてを繰り返して私はやっと気づきました。
15分延ばしたから、この一か月間は起き上がることもできないほどだるくて気持ちも沈んでいたのだということに・・・
「たったの15分のがんばり」が
私の一か月以上続く不調を引き起こす原因となっていたのです。
がんばらないように気を付けていてもこのありさま。
これを模範とするために通院している精神科の先生に「ふつう」を「おもい」にしたせいでここ一か月はろくに眠れませんでしたと告白しました。
あれだけ気を付けていたのに「焦り」があったんだなと驚いた一月でした。
こだまこうじ (元ひきこもり。1976年福岡県飯塚市生まれ、同市在住。)
<プロフィール> 中学時代いじめ被害、高校で不登校に。その後、最初のひきこもり時代を経験。このとき、「キツイから精神科に連れて行って」と親に泣いて希望するも、完全に無視される。周囲から就労を強要され、専門学校へ入学。その後、就労するも就職先の社員寮で動かなくなっているところを発見され、会社は9か月でクビ。4年間の本格的なひきこもり時代に突入。 その後、保健所の支援でひきこもりから脱出。2009年、保健師にとってまれにみる成功例として福岡県嘉穂・鞍手保健環境事務所の「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーに就任。自立できるほどの収入はないが、ひきこもり当事者家族の話を聴いて支援をすることになる。 しかし、2020年に国や県がひきこもり当事者への就労支援を加速させることになり、「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーとしてのお役御免となる。 「死んで地獄に行ったら、鬼に責め苦を喰らい、極楽に行っても悟った超阿弥陀如来に解脱するまで修行させられる」ことを恐れて、今日も何とか生き延びている。 |

