2025/02/07

—ひきこもりサバイバー38 -ひきこもりは究極の自己管理術-

  福岡県立大学で嗜癖行動学を研究している四戸智昭です。

ひきこもりからのサバイバー(生還者)の声に学ぶことが大切だと思い、元ひきこもりのこだまこうじさんにエッセイを書いてもらいました。随時掲載の予定です。
今回は、『あなたはひきこもりですか? それともひきこもり脱出者ですか?』というお話。

◆◆◆

あなたは週に一日は休みがあるでしょうか?

 月に一日は休みがあるでしょうか?

 無くてもやっていけるでしょうか?

 過労で疲れた体に引っ張られて心を病んで自殺しないでしょうか?

 大丈夫な人は超人です。

 大丈夫でない人はとても真面目な人です。

 自殺してしまう人は助けてというと周りに迷惑がかかると思う優しい人です。

 ひきこもって命を守る人はとても心に素直な人です。

 しかもそれを何年も続けることができている人は極めて優れた自己管理能力のある人です。

 外に出て働くことが正しいという考え方が好きで体質にあっている人が毎日会社に行くことに苦痛を覚えないということならば別です。

 自分がよいと思う分野を毎日続けるのは当たり前だと言え実行している人はひきこもりの人と同じ立場なのでその大変さがわかるでしょう。

 しかし会社に行きながら休みを待ち望んでいる人はひきこもりの人に対して持続能力で負けています。

 自分が選んだ道を続ける力で負けています。

 コロナ禍でお家時間の過ごし方に困難を覚える社会があります。

 「苦手なことをやり続けること」は大変です。

 お家時間に苦戦した人は同じ苦労を、いや毎日ひきこもりを継続できている人たちはそれ以上の苦労を「お外時間の過ごし方」に感じることを考えてもらえれば幸いです。

 ひきこもりの人には休みなどないのですから。






こだまこうじ (元ひきこもり。1976年福岡県飯塚市生まれ、同市在住。)


<プロフィール>
 中学時代いじめ被害、高校で不登校に。その後、最初のひきこもり時代を経験。このとき、「キツイから精神科に連れて行って」と親に泣いて希望するも、完全に無視される。周囲から就労を強要され、専門学校へ入学。その後、就労するも就職先の社員寮で動かなくなっているところを発見され、会社は9か月でクビ。4年間の本格的なひきこもり時代に突入。
 その後、保健所の支援でひきこもりから脱出。2009年、保健師にとってまれにみる成功例として福岡県嘉穂・鞍手保健環境事務所の「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーに就任。自立できるほどの収入はないが、ひきこもり当事者家族の話を聴いて支援をすることになる。
 しかし、2020年に国や県がひきこもり当事者への就労支援を加速させることになり、「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーとしてのお役御免となる。
 「死んで地獄に行ったら、鬼に責め苦を喰らい、極楽に行っても悟った超阿弥陀如来に解脱するまで修行させられる」ことを恐れて、今日も何とか生き延びている。