2025/02/21

—ひきこもりサバイバー40 -ひきこもりの人をサポートする人は-

  福岡県立大学で嗜癖行動学を研究している四戸智昭です。

ひきこもりからのサバイバー(生還者)の声に学ぶことが大切だと思い、元ひきこもりのこだまこうじさんにエッセイを書いてもらいました。随時掲載の予定です。
今回は、『あなたはひきこもりですか? それともひきこもり脱出者ですか?』というお話。

◆◆◆

働くというのは「傍(はた)を楽にする」ことだという説があります。

ひきこもりの人をサポートしているあなたは楽をしていますか?

 当然、していないと思います。

 だってひきこもりの人を助けてあげられないのですから・・・

 ひきこもりの人に接すると普通の社会人の方は価値観の違いに 混乱し、立ちすくんでしまいます。

 怒りや不安、無力感に苛立ち、そして恐怖を感じます。

 「あのときもっと○○○○していれば」 そんな考えにとらわれ、どんどんつらくなっていきます。

 ひきこもりの人はサポートの人が当初想定していた範囲を圧倒的に外れてくるので対応に追われて疲れまてしまいます。

 「ちゃんと頑張って勉強したとおりに対応しているのに成果が出ない」 ことほどつらいことはありません。

 しかしこれは成果を「ひきこもりの人を社会復帰させる」というところに おいているがゆえに起こる疲れです。

 単純に「ひきこもり文化圏」と「会社的文化圏」の異文化交流だ!と考えればこの交流から何を得られるのかが焦点になって面白がることができます。

 異文化交流なので無理にこちらに従わせるのではなく、またこちらが従うのではなく、違いを話しあい、 お互いに認め合う。

 その先にどちらも疲れない道があるように思えます。

 ひきこもりの人から見たらあなたも傍(はた)=周りの人です。

 あるあなたがいろいろ抱え込んで疲れていたらひきこもりの人は今の自分を 肯定して先に進むより、否定して座り込むでしょう。

 周りも楽、自分も楽。 ウィンウインの関係が本当の働くです。

 私個人としてはサポーターの人にはこの交流を面白がり、二つの違う文化圏の中から新しい発見や交流の仕方を学んで新しいスタイルの社会を生み出す楽しみを経験してほしいと思っています。

昭和時代はバスに乗車拒否されていた車椅子の人がバスに乗れるようになったように、

年老いた親を人に預けて働くなんて人間じゃないと全否定していた社会がやや改善されたように、

社会制度は時代に合わせて変わっていくべきだと思います。






こだまこうじ (元ひきこもり。1976年福岡県飯塚市生まれ、同市在住。)


<プロフィール>
 中学時代いじめ被害、高校で不登校に。その後、最初のひきこもり時代を経験。このとき、「キツイから精神科に連れて行って」と親に泣いて希望するも、完全に無視される。周囲から就労を強要され、専門学校へ入学。その後、就労するも就職先の社員寮で動かなくなっているところを発見され、会社は9か月でクビ。4年間の本格的なひきこもり時代に突入。
 その後、保健所の支援でひきこもりから脱出。2009年、保健師にとってまれにみる成功例として福岡県嘉穂・鞍手保健環境事務所の「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーに就任。自立できるほどの収入はないが、ひきこもり当事者家族の話を聴いて支援をすることになる。
 しかし、2020年に国や県がひきこもり当事者への就労支援を加速させることになり、「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーとしてのお役御免となる。
 「死んで地獄に行ったら、鬼に責め苦を喰らい、極楽に行っても悟った超阿弥陀如来に解脱するまで修行させられる」ことを恐れて、今日も何とか生き延びている。

0 件のコメント:

コメントを投稿