福岡県立大学で嗜癖行動学を研究している四戸智昭です。
ひきこもりからのサバイバー(生還者)の声に学ぶことが大切だと思い、元ひきこもりのこだまこうじさんにエッセイを書いてもらいました。随時掲載の予定です。
今回は、『ひきこもりの継続を強力にする小さな成功体験』というお話。
◆◆◆
「心を支えてくれる優しい本を読もう」
私がそう思ったのは人に話をすると
「ぼーっとしてないで先のことを考えた方がいい」
あるいは
「今は休むことを第一に考えて」
のどちらかに押し込められてしまう気がしたからです。
どちらも正しく正しいから危ういなぁと感じています。
天秤は違うものが同じ重さで両方の天秤の皿に乗っているので倒れずにいられると感じています。
私としては重りが天秤のお皿に乗っていないでふらふらしないのが理想です。
こういう気持ちになってふらふらしなくなっちゃうと現世から来世へと旅立ってしまうのかもしれません。
あれもこれもと考えられる間は意外に大丈夫なものです。
私が選んだのはTRPGリプレイ。
世界を救う(?)勇者パーティキャラクターを現実にいるプレイヤーたちがサイコロを振りながら遊ぶ様子を文章化したものです。
ファンタジー世界で伝説の清らかな乙女にしかその背に乗ることを許さない聖なるユニコーンもリプレイの中ではプレイヤーたちは
「うむ、宮廷でユニコーン保護か。うちの娘に世話をさせようとさせたら拒否られてとか、ありそうだな」
「中世の宮廷は奔放ですからな。いろいろと発覚して大問題に。犯人探しでよくもうちの娘の純潔を奪ったなと決闘なんかが頻発してそうですな」
という具合なので世界を救う目的とすちゃらか具合がいいバランスで安心します。
そして楽しい時間を過ごしてこう思うのです。
「また一日が無駄になった」と・・・。(書けなかったときもカウントしているので、75からいきなり78に飛んでます)
こだまこうじ (元ひきこもり。1976年福岡県飯塚市生まれ、同市在住。)
<プロフィール> 中学時代いじめ被害、高校で不登校に。その後、最初のひきこもり時代を経験。このとき、「キツイから精神科に連れて行って」と親に泣いて希望するも、完全に無視される。周囲から就労を強要され、専門学校へ入学。その後、就労するも就職先の社員寮で動かなくなっているところを発見され、会社は9か月でクビ。4年間の本格的なひきこもり時代に突入。 その後、保健所の支援でひきこもりから脱出。2009年、保健師にとってまれにみる成功例として福岡県嘉穂・鞍手保健環境事務所の「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーに就任。自立できるほどの収入はないが、ひきこもり当事者家族の話を聴いて支援をすることになる。 しかし、2020年に国や県がひきこもり当事者への就労支援を加速させることになり、「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーとしてのお役御免となる。 「死んで地獄に行ったら、鬼に責め苦を喰らい、極楽に行っても悟った超阿弥陀如来に解脱するまで修行させられる」ことを恐れて、今日も何とか生き延びている。 |
