2025/11/21

—ひきこもりサバイバー79 -ひきこもりの一日とは-

     福岡県立大学で嗜癖行動学を研究している四戸智昭です。

ひきこもりからのサバイバー(生還者)の声に学ぶことが大切だと思い、元ひきこもりのこだまこうじさんにエッセイを書いてもらいました。随時掲載の予定です。
今回は、『ひきこもりの継続を強力にする小さな成功体験』というお話。

◆◆◆

朝、人がいない6時ぐらいに公園へ散歩します。

家に帰ってしばらくぼんやりします。

7時ぐらいに薄くなった髪に育毛剤をぬります。

その後、きれいに手を洗って育毛剤を流します。

それから仏壇にお茶を上げて、線香を立てて鐘を鳴らし、ご先祖様にご挨拶です。

母の用意してくれた朝食を風呂掃除を終えた父と一緒に食べて、母が「これ体にいいらしいから」と購入してくれているその時期のお気に入りの健康になる黒酢とか卵黄とか朝鮮人参とかのカプセルを飲みます。

九時ごろにはちょっと心が落ち着くというマインドフルネス瞑想もどきをやります。(このあたり健康食品を愛好する母の子だなぁと思いますが)

十時をすぎるとフィットボクシング2の普通をやらないとと思います。

十一時ごろになると焦りだしてフィットボクシング2の「ふつう」をやります。

それが終わると昼食の時間なのでパンか、カップ麺を食べます。

午後一時ごろになると「あー今日も半分すぎた」と思います。

やることがないのでパチンコにでも行こうかと思うのはデフォルトです。

しかし午後四時までに帰らないと激おこされるので考えどころです。

考えていろいろしているうち(どうしようと本を読む、ユーチューブを見る、仕事しないとと頭を抱える、パチンコいってぼろ負けしたとき、勝ったときを夢想する)に午後二時半を過ぎると「今さら自転車で行ってもついてすぐに帰ってこないとダメだ」と思って諦めます。

元気がよく頭の働きがいいときは即決でいろいろ「しない」ときもあります。

「する」のではなく、「やらない」でいられるのです。

ともあれ4時になるとご飯なので一日が終わります。

夜はお風呂に入って6時ごろには布団の中です。

こうしてどんどん時間が過ぎていきます。

私は休めていますか?

















こだまこうじ (元ひきこもり。1976年福岡県飯塚市生まれ、同市在住。)


<プロフィール>
 中学時代いじめ被害、高校で不登校に。その後、最初のひきこもり時代を経験。このとき、「キツイから精神科に連れて行って」と親に泣いて希望するも、完全に無視される。周囲から就労を強要され、専門学校へ入学。その後、就労するも就職先の社員寮で動かなくなっているところを発見され、会社は9か月でクビ。4年間の本格的なひきこもり時代に突入。
 その後、保健所の支援でひきこもりから脱出。2009年、保健師にとってまれにみる成功例として福岡県嘉穂・鞍手保健環境事務所の「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーに就任。自立できるほどの収入はないが、ひきこもり当事者家族の話を聴いて支援をすることになる。
 しかし、2020年に国や県がひきこもり当事者への就労支援を加速させることになり、「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーとしてのお役御免となる。
 「死んで地獄に行ったら、鬼に責め苦を喰らい、極楽に行っても悟った超阿弥陀如来に解脱するまで修行させられる」ことを恐れて、今日も何とか生き延びている。

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