福岡県立大学で嗜癖行動学を研究している四戸智昭です。
ひきこもりからのサバイバー(生還者)の声に学ぶことが大切だと思い、元ひきこもりのこだまこうじさんにエッセイを書いてもらいました。随時掲載の予定です。
今回は、『あなたはひきこもりですか? それともひきこもり脱出者ですか?』というお話。
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ひきこもりの人は「このままでいい」といい、 社会人の人は「ひきこもっていて何が楽しいのか」 といいます。
よくある話です。
そしてこれはそれぞれにとって当たり前の感覚です。
誰だって「今の自分が間違っている」と思っていてはその世界のストレスに対抗できません。
ひきこもりの人が「外に出て何が楽しいの?」と 聞いてきたときに「会社に行くことが楽しい」と 答えられなければ社会人の方は 「俺が会社で苦しんでいるのにひきこもりは 家で楽をしているからずるい、差別だ!」と机をたたいているようなものです。
ひきこもりの人から見れば 「外に出続けたばっかりに可哀そう」としか感じられません。
せめて 「働いてお金を稼げばこんな楽しいことができて 私はこのために働いている」 なら納得できなくもなさそうですが 「とにかく仕事につけ」 「外に出れば何かしていれば楽しいことがある」 ではひきこもりの人には響きません。
実際にコロナ禍でのお家時間を楽しむのに四苦八苦している 社会人の人たちを見ると
「何かしてないとダメな体と心になってしまうのが仕事をするということなのかなぁ」
と元ひきこもりとしてはちょっと怖くなってしまいます。
休めない病気を蔓延させる。
それが会社、学校という組織なのかもしれません。
こだまこうじ (元ひきこもり。1976年福岡県飯塚市生まれ、同市在住。)
<プロフィール> 中学時代いじめ被害、高校で不登校に。その後、最初のひきこもり時代を経験。このとき、「キツイから精神科に連れて行って」と親に泣いて希望するも、完全に無視される。周囲から就労を強要され、専門学校へ入学。その後、就労するも就職先の社員寮で動かなくなっているところを発見され、会社は9か月でクビ。4年間の本格的なひきこもり時代に突入。 その後、保健所の支援でひきこもりから脱出。2009年、保健師にとってまれにみる成功例として福岡県嘉穂・鞍手保健環境事務所の「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーに就任。自立できるほどの収入はないが、ひきこもり当事者家族の話を聴いて支援をすることになる。 しかし、2020年に国や県がひきこもり当事者への就労支援を加速させることになり、「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーとしてのお役御免となる。 「死んで地獄に行ったら、鬼に責め苦を喰らい、極楽に行っても悟った超阿弥陀如来に解脱するまで修行させられる」ことを恐れて、今日も何とか生き延びている。 |
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