福岡県立大学で嗜癖行動学を研究している四戸智昭です。
ひきこもりからのサバイバー(生還者)の声に学ぶことが大切だと思い、元ひきこもりのこだまこうじさんにエッセイを書いてもらいました。随時掲載の予定です。
今回は、『あなたはひきこもりですか? それともひきこもり脱出者ですか?』というお話。
◆◆◆
「それまで真面目に学校にいっていたのに急にひきこもって」
そんな声をよく聞きます。
その理由を探してみんな頑張っています。
しかしゆっくりと振り返るとその複雑な話を簡単に見ることも できることに気づきます。
小学校高学年でも中学校でも高校でも大学でも会社でもいいのですが そこで立ち止まってしまうひきこもりの人たちは単純に 「人と同じ」というワードに引っかかってしまったに過ぎないのでは ないでしょうか?
あまり複雑に考えないので単純すぎる話になりますが 学校では全員同じ授業を受けます。
同じ時間同じ教科を勉強し、同じ時間体育で体を動かします。 得意不得意がでます。
「人と同じように」できない。
それぞれが違うことに気づきます。
しかしテストの点数が悪ければ怒られ、良ければ褒められます。
苦手な教科を得意な教科より多く勉強したいと思っても学校は決まった時間均等に授業を消化する場所なのでできません。
真面目な子はここでつまずきます。
ひきこもるほど真面目な子は「宿題を忘れる」ことでさえ「みんなできているのに」と思い、すごく落ち込みます。
ひきこもる人にとって人と違うことは「悪いこと」です。
毎日、学校で「人と同じ」時間割をこなしていれば自然とそうなります。
体調が悪くても会社に行く社会人のように・・・
休むと査定に響くんじゃないかと恐れる社会人のように・・・
習慣は強い力を持っています。
毎日やっていることが心地よく正しいことだと思ってしまいます。
正しいことのはずだと信じてしまいます。
「人と同じ」ことをしなくちゃいけないのに「人とは違う」。
これは大きなつまずきどころです。
小学校は住んでいる区域で決まり、中学校も普通はそう、高校生になるときに突然、いける高校リストから選ぶことになり、大学になると 人と同じ選択というのはかなり難しくなります。
高校受験の時は私立と公立を十校以下の中から二つ選べばよかったのに、 大学になるとその数は788大学(旺文社 教育情報センター 2021 年 4 月 1 日)に増えます。
学部とか考えるさらに選択肢が増えと選ぶだけでもとんでもないエネルギーが必要になります。
さらに大学生から社会人になるときいきなり「自分の好きに選びなさい」と とんでもない難題が突き付けられます。 企業数だけでも3856457(統計局平成28年度調査)です。
小学生で「人と同じようにすること」つまりは「人並み」を見失って つまずいた人にはきつすぎる課題です。
中学生でつまずいた人、高校でつまずいた人、大学でつまずいた人。
どの段階の人でも怖くて逃げだしてしまいます。
せめてひきこもった時点から社会人になった「人と同じ」ようにやらなかった中学高校時代の 勉強とその青春時間を補填してくれればいいのですがそれはなく、高校卒業認定試験で合格を勝ち取るぐらいの時間はあるのですが、本当の中学高校生活勉強力はつきません。
それをやらないので 「ひきこもりの人は人間関係が苦手だ」という面がサポートアプローチの最重要点となってしまいます。
働きながら勉強する人は立派です。
しかし彼ら彼女らは「人と違って」立派なのであって「人と同じ」を 目指すひきこもりの私たちにとっては参考にするべきお手本にはなりえない気がするのですがどうでしょうか?
こだまこうじ (元ひきこもり。1976年福岡県飯塚市生まれ、同市在住。)
<プロフィール> 中学時代いじめ被害、高校で不登校に。その後、最初のひきこもり時代を経験。このとき、「キツイから精神科に連れて行って」と親に泣いて希望するも、完全に無視される。周囲から就労を強要され、専門学校へ入学。その後、就労するも就職先の社員寮で動かなくなっているところを発見され、会社は9か月でクビ。4年間の本格的なひきこもり時代に突入。 その後、保健所の支援でひきこもりから脱出。2009年、保健師にとってまれにみる成功例として福岡県嘉穂・鞍手保健環境事務所の「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーに就任。自立できるほどの収入はないが、ひきこもり当事者家族の話を聴いて支援をすることになる。 しかし、2020年に国や県がひきこもり当事者への就労支援を加速させることになり、「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーとしてのお役御免となる。 「死んで地獄に行ったら、鬼に責め苦を喰らい、極楽に行っても悟った超阿弥陀如来に解脱するまで修行させられる」ことを恐れて、今日も何とか生き延びている。 |
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