2021/10/16

ひきこもりサバイバー28 -ひきこもりの人にとってこれから絶対に必要なものは?-

福岡県立大学で嗜癖行動学を研究している四戸智昭です。

ひきこもりからのサバイバー(生還者)の声に学ぶことが大切だと思い、元ひきこもりのこだまこうじさんにエッセイを書いてもらいました。随時掲載の予定です。
今回は、『ひきこもりの人にとって、これから絶対に必要なものとは』というお話。

◆◆◆

これを読んでくれているあなたにも言えることなのですが、 これからの最低限の生存戦略として必要となる技術です。

 もっとも今、社会人として普通にやっている人にとっては ごくごく当たり前のことなので「そんな簡単なこと?」と 鼻で笑われるかもしれません。

 しかしひきこもり期間があって学生時代にそれがなかった(ポケベルが ならないとかが最新ヒット曲だった時代の人間、私とか)に とっては仕事をはじめて12年たっても、なかなか身についていない技術です。

 いわゆる「スマホ決済」というやつです。

 難しく言えばキャッシュレス社会への適応力こそがひきこもりの人にとっての最も重要で困難なミッションになります。

 最近、私は唯一の友達のすすめで某有名メーカーのネットショップに登録しようとしたのですがそこで求められたのが 「携帯電話の番号」 でした。

 「家電話の電話番号」 を入れると「正しい電話番号を入力してください」とのこと・・・ 。

 セキュリティ上、個人携帯番号がないとダメらしいのです。

 銀行すらも支店や窓口をどんどん減らし、政府もデジタル庁を作って紙幣(紙 のお金)の数を半分にすると言い出した2020年。

 ひきこもりの人、「スマホなんて使わない!」と言って時代に乗り遅れた人(私)が 今、身につけるべきはスマホを買う勇気!なのです。

 政府計画では2030年までは紙幣は存在する予定なので2021年の 今から9年以内にスマホを持っていないひきこもりの人は自分の携帯番号 を手に入れることを目標にしましょう。

 ひきこもりの子供を持つ親御さんは将来の身分証明書、保険証、継続支援を 受けるために必要な道具として子供さんにスマホを買ってあげましょう。

 使わないとか使う必要がないと言われたら「メルカリ」に登録できるようになったらいいからと練習を強要しましょう。

 ともあれ、家は持ってなくてもスマホは持ってないとダメという世界のキャッシュレス事情を考えると子供が高齢になったとき、スマホを持っていないために国の支援を受けられないという事態が起こらないとも限りません。

 これは8050問題よりももっとすごい問題に思えます。

 さすがに国が全国民にセキュリティ万全のマイナンバースマホを無償配布しますとはならないと思うので、その道具としてもっとも有力な候補であるスマホ5Gを手にしておくことはたぶん無駄にならないのではないかと・・・ 。

 スマホのことはよくわかりませんが、「家電話じゃダメなの!?」と びっくりしたので、このエッセイを書いてみました。






こだまこうじ (元ひきこもり。1976年福岡県飯塚市生まれ、同市在住。)


<プロフィール>
 中学時代いじめ被害、高校で不登校に。その後、最初のひきこもり時代を経験。このとき、「キツイから精神科に連れて行って」と親に泣いて希望するも、完全に無視される。周囲から就労を強要され、専門学校へ入学。その後、就労するも就職先の社員寮で動かなくなっているところを発見され、会社は9か月でクビ。4年間の本格的なひきこもり時代に突入。
 その後、保健所の支援でひきこもりから脱出。2009年、保健師にとってまれにみる成功例として福岡県嘉穂・鞍手保健環境事務所の「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーに就任。自立できるほどの収入はないが、ひきこもり当事者家族の話を聴いて支援をすることになる。
 しかし、2020年に国や県がひきこもり当事者への就労支援を加速させることになり、「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーとしてのお役御免となる。
 「死んで地獄に行ったら、鬼に責め苦を喰らい、極楽に行っても悟った超阿弥陀如来に解脱するまで修行させられる」ことを恐れて、今日も何とか生き延びている。




0 件のコメント: