2026/06/26

—ひきこもりサバイバー109 -20年越しのケーキ?-

     福岡県立大学で嗜癖行動学を研究している四戸智昭です。

ひきこもりからのサバイバー(生還者)の声に学ぶことが大切だと思い、元ひきこもりのこだまこうじさんにエッセイを書いてもらいました。随時掲載の予定です。
今回は、『ひきこもりの継続を強力にする小さな成功体験』というお話。

◆◆◆

原稿料というものが入ったので、記念にケーキを食べに行きました。

保健所ではじめて、講演料(?)が出たときに

「これでホテルのケーキバイキングに2回は行けますよ」

とにこにこな保健師さんの言葉を実現させようとしたものの、ホテルのでかさにビビッてホテルに入れなかったことへのささやかなリベンジです。

その頃の自分にこのことを教えたら、間違いなく号泣したでしょう。

「50歳になっても、ひきこもりやってんの!!」

いや、すまない、それどころか彼女もいないし、友達の数も一人たりとも増えてないし、車も持ってないし、資格は運転免許証だけ――とかいったら、20年前(もっと昔かも?)の私は絶望するに違いありません。

書いてて自分がかわいそうになってきましたが、ケーキを三つほど並べて、うまうましているときに、何となく20年前の自分ってどんな感じだったかなぁと思ったのもで。。。

振り返ってみると、その頃は親憎しの念で固まっていたように思います。

まあ、10年も経てば、たまに親に感謝するようになるし、

20年も経てば、親が死んだらどうなるんだと不安な夜をすごすことになるのですが、

当時の自分にそういう話をしても、反発されるだけでしょう。

若くて、元気なうちは反骨心というか、客気というのか、自分で頑張ろう精神が強いものです。

仕方がありません。

ただひきこもり生活していると歯をやられがちだから気を付けろとか、年金保険料の免除申請は忘れるなとかは、言ってあげたいと思います。


最初四分の一免除でも頑張って異議を申し立ててね。君の想像とは違って裁判所に行くことはないから・・・、大変だけど君はこれから9年間は、仕事に就けないんだぞ!!

200円のために毎日、ハンガー磨きするんだぞ!!

いやでも免除申請を頑張ってたら、障害年金の申請の方をやる力がなくなって詰んでしまうか・・・

タイムリープものでよくあるのですが、結局、忠告は意味がないというか、それを言ったせいでさらなるバッドエンドを招くフラグのようです。(人造人間倒したと思ったら、その数年後に全王様に宇宙ごと消されるとか・・・)

結局、今が一番いい、のでしょう。

ちゃんと働いている人たちの車を眺めながら、たどりついたごくごく平凡な答えに、生活はふつーじゃないけど、考えることはふつーなんだなぁとしみじみした一人お祝いでした。





















こだまこうじ (元ひきこもり。1976年福岡県飯塚市生まれ、同市在住。)


<プロフィール>
 中学時代いじめ被害、高校で不登校に。その後、最初のひきこもり時代を経験。このとき、「キツイから精神科に連れて行って」と親に泣いて希望するも、完全に無視される。周囲から就労を強要され、専門学校へ入学。その後、就労するも就職先の社員寮で動かなくなっているところを発見され、会社は9か月でクビ。4年間の本格的なひきこもり時代に突入。
 その後、保健所の支援でひきこもりから脱出。2009年、保健師にとってまれにみる成功例として福岡県嘉穂・鞍手保健環境事務所の「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーに就任。自立できるほどの収入はないが、ひきこもり当事者家族の話を聴いて支援をすることになる。
 しかし、2020年に国や県がひきこもり当事者への就労支援を加速させることになり、「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーとしてのお役御免となる。
 「死んで地獄に行ったら、鬼に責め苦を喰らい、極楽に行っても悟った超阿弥陀如来に解脱するまで修行させられる」ことを恐れて、今日も何とか生き延びている。

2026/06/19

—ひきこもりサバイバー108 -ちゃんと載ってたんだなぁ-

     福岡県立大学で嗜癖行動学を研究している四戸智昭です。

ひきこもりからのサバイバー(生還者)の声に学ぶことが大切だと思い、元ひきこもりのこだまこうじさんにエッセイを書いてもらいました。随時掲載の予定です。
今回は、『ひきこもりの継続を強力にする小さな成功体験』というお話。

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通帳にお金が振り込まれていました。

実は、新聞に掲載されたコラムをこの目で確認したことがありませんでした。

掲載してもらっているのに失礼な感じがしますが、これは仕方ありません。

なぜなら、家の新聞を決定するのは、我が支配者たる親だからです。

ひきこもり状態というのはそんなものです。

そして、コラムの報酬が入金されたのを見て、安心しました。

お金が入金されたことで、「自分が社会に関わっているという実感が得られた」からです。


そう考えると「お金をもらわない活動」をするのは、けっこうハードモードな気がしました。

もうちょっと踏み込むと「お金の代わりに、ありがとうをもらう活動」は、やる側も、ありがとうを言う側も大変な感じがします。

美しく、相手を感動させる「ありがとう」は最高評価で、いやいやな「ありがとう」は最低評価とかやるのは、大変です。

心の中で「ありがとう」はやっている側には伝わりません。

やっぱりお金は便利だなぁと思いました。

そういえば、完全にお金ゼロで、親が買い置きしてくれたカップ麺を啜り、ちょっとのコーヒー粉に、料理砂糖を大量にぶち込んで、お湯をつぎ足し継ぎ足しして、甘味を取っていたひきこもりの頃は、外の世界と関わろうなんて、ちっとも思わなかったなぁ。

「やりたいことはないの?」と聞かれても、外の世界は「お金を使う前提の世界」なんで、遠慮して「お金くれたら考える」とか言えなかったなぁ。

子供の頃は、DX超合金〇〇馬の前で駄々をこねて、親のお金で買い物してもらうような勇者だったのに・・・・



















こだまこうじ (元ひきこもり。1976年福岡県飯塚市生まれ、同市在住。)


<プロフィール>
 中学時代いじめ被害、高校で不登校に。その後、最初のひきこもり時代を経験。このとき、「キツイから精神科に連れて行って」と親に泣いて希望するも、完全に無視される。周囲から就労を強要され、専門学校へ入学。その後、就労するも就職先の社員寮で動かなくなっているところを発見され、会社は9か月でクビ。4年間の本格的なひきこもり時代に突入。
 その後、保健所の支援でひきこもりから脱出。2009年、保健師にとってまれにみる成功例として福岡県嘉穂・鞍手保健環境事務所の「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーに就任。自立できるほどの収入はないが、ひきこもり当事者家族の話を聴いて支援をすることになる。
 しかし、2020年に国や県がひきこもり当事者への就労支援を加速させることになり、「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーとしてのお役御免となる。
 「死んで地獄に行ったら、鬼に責め苦を喰らい、極楽に行っても悟った超阿弥陀如来に解脱するまで修行させられる」ことを恐れて、今日も何とか生き延びている。

2026/06/12

—ひきこもりサバイバー107 -お礼のメールを-

 福岡県立大学で嗜癖行動学を研究している四戸智昭です。

ひきこもりからのサバイバー(生還者)の声に学ぶことが大切だと思い、元ひきこもりのこだまこうじさんにエッセイを書いてもらいました。随時掲載の予定です。
今回は、『ひきこもりの継続を強力にする小さな成功体験』というお話。

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支援していても手ごたえがない。

そんな話を社協の大浦さんとメールのやりとりで話していました。

手ごたえはなくても、母親を訪ねてきたお客さんがいきなり声をかけてきたら、ひきこもっている方は超ビビるので、手ごたえはなくても「効果は抜群だ!」みたいな話です。

私の「ひきこもって話ができないとありがたくてもお礼なんてできませんよ」というメールに「それでも何か反応があったらうれしい」と返信が来ました。

そのおかげで、二度目のひきこもり期間に、筑豊サテライトオフィスに電話して、ジョイフルでアイスとかケーキとかをおごってもらった事を思い出しました。

今考えるとよく自分から、電話したなぁと思いますが、それだけ追いつめられていたってことでしょう。

話だけでもと電話をしたら、家の前まで迎えに来てくれて、ジョイフルスイーツを食べさせてくれて、話も聞いてくれる。

ありがたい、とてもありがたい。

私はスイーツ系に弱いらしく、不安になるとスイーツ目当てで、メールをするようになりました。

一年ちょっと続いたと思います。

苦しい→サテライトにメール→スイーツ→ありがたい→安定みたいな支援を受けました。

これがあったので、生き延びたと思っているので、そのお礼のメールをすることにしました。

いや、めちゃくちゃ感謝していても、改めてお礼をするのは、けっこう恥ずかしいです。

ただせっかく話に出たので、悶えながらメールを送信。

すぐに返信が来ました。

「たびたび支援機関での講演など頑張っているようなので、今年は見守っていました」

それをみて、私は思いました。

ちゃんと調べてくれてありがたいなぁ。

そして

「そういえば去年って、何やったんだっけ?」

もともと人の顔とか名前を覚えるのは苦手ですし、記憶力はよろしくないので、ちょっと考えました。

ホントに何やってたっけ?

いや、そもそも今年って令和何年?

二三日後、

山田饅頭に、カカオ研究所、と思い出していくと、セブンイレブンのバレンタインフェアでちょっとお高いチョコレートを買ってもらって、ブラックコーヒー飲めないといって、イートインコーナーで書類の不備を訂正した記憶がよみがえってきました。

ふつうに社会人をやっているとわからないんですが、毎日、同じ部屋で、同じような行動をだけやっていると時間の経過とか記憶があいまいになってきます。

一年前も、十年前も、昨日も、ほぼ変わらないので、脳が記憶の更新をカットするのかもしれません。


同じ柄のシャツを何十枚も並べていれば、朝、なにを着るか悩む時間を節約できる。

そんな感じです。


こだまこうじ (元ひきこもり。1976年福岡県飯塚市生まれ、同市在住。)


<プロフィール>
 中学時代いじめ被害、高校で不登校に。その後、最初のひきこもり時代を経験。このとき、「キツイから精神科に連れて行って」と親に泣いて希望するも、完全に無視される。周囲から就労を強要され、専門学校へ入学。その後、就労するも就職先の社員寮で動かなくなっているところを発見され、会社は9か月でクビ。4年間の本格的なひきこもり時代に突入。
 その後、保健所の支援でひきこもりから脱出。2009年、保健師にとってまれにみる成功例として福岡県嘉穂・鞍手保健環境事務所の「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーに就任。自立できるほどの収入はないが、ひきこもり当事者家族の話を聴いて支援をすることになる。
 しかし、2020年に国や県がひきこもり当事者への就労支援を加速させることになり、「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーとしてのお役御免となる。
 「死んで地獄に行ったら、鬼に責め苦を喰らい、極楽に行っても悟った超阿弥陀如来に解脱するまで修行させられる」ことを恐れて、今日も何とか生き延びている。

2026/06/05

—ひきこもりサバイバー106 -胃が痛くなりました-

     福岡県立大学で嗜癖行動学を研究している四戸智昭です。

ひきこもりからのサバイバー(生還者)の声に学ぶことが大切だと思い、元ひきこもりのこだまこうじさんにエッセイを書いてもらいました。随時掲載の予定です。
今回は、『ひきこもりの継続を強力にする小さな成功体験』というお話。

◆◆◆

原稿内容をメールでやりとりするとき、胃が痛くなります。



緊張というのもあるのですが、単純にビジネスメールに慣れていないんです。

どのレベルでなれていないかと言うと、「メールを受け取ったら必ず返信する」がわからないレベルでできません。

なので、山下さんからメールが来るたびに、「こういう場合はどう返すんだっけ?」と調べます。

そして、メールを書いて、メールの自動修正機能に、「ご」が抜けているとか「は」が足りないとか赤線を付けられて、訂正します。

なんでこんなにできないのかと頭を抱えてしまいます。

しかし、よく考えたら、ビジネスメールって、私が就職した30年前くらいには失礼だとか言われていたんです。

私がひきこもって出てきたときも、まだスマホは誕生していませんでした。

ネット回線も、「ネットゲームをしたら破産する」レベルの高額商品だったはずです。

その後、私はビジネスメールが必要にならない裏道(?)を歩いてきました。

出来ないのは当たり前なんですね。

そんなことを考えていると、ひきこもり支援者の支援の手ごたえとひきこもっている私たちの支援への感想がズレるのも当たり前だなぁと思いました。

支援者はビジネスメール熟練者で、「すぐに返信、明確回答」が当たり前で、ひきこもりの私たちは「顔を合わさない、話しかけない」が当たり前のビジネスメール失礼派です。

どっちもが「当たり前」をやると、どっちも「違うんだよなぁ」となるのは「当たり前」です。

どっちが寄り添うにしても、大変です。



















こだまこうじ (元ひきこもり。1976年福岡県飯塚市生まれ、同市在住。)


<プロフィール>
 中学時代いじめ被害、高校で不登校に。その後、最初のひきこもり時代を経験。このとき、「キツイから精神科に連れて行って」と親に泣いて希望するも、完全に無視される。周囲から就労を強要され、専門学校へ入学。その後、就労するも就職先の社員寮で動かなくなっているところを発見され、会社は9か月でクビ。4年間の本格的なひきこもり時代に突入。
 その後、保健所の支援でひきこもりから脱出。2009年、保健師にとってまれにみる成功例として福岡県嘉穂・鞍手保健環境事務所の「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーに就任。自立できるほどの収入はないが、ひきこもり当事者家族の話を聴いて支援をすることになる。
 しかし、2020年に国や県がひきこもり当事者への就労支援を加速させることになり、「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーとしてのお役御免となる。
 「死んで地獄に行ったら、鬼に責め苦を喰らい、極楽に行っても悟った超阿弥陀如来に解脱するまで修行させられる」ことを恐れて、今日も何とか生き延びている。