2020/10/09

ひきこもりサバイバー15 —やりたいことがないのは・・・—

 福岡県立大学で教員をしている四戸智昭です。

 ひきこもりからのサバイバー(生還者)の声に学ぶことが大切だと思い、元ひきこもりのこだまこうじさんにエッセイを書いてもらいました。今回は「やりたいことがない」ひきこもりへの、親の思い切った投資について書いてもらいました。

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 ひきこもりの家族を持つ人たちは必ず「何でもいいからやりたいことはないのか?」
とひきこもりの人に言葉をかけています。

ひきこもりの人の答えは「何もない」です。

「今、私が認識している範囲には何もない」
「今、あなたが許可してくれることの中には何もない」そういうことです。

私が住んでいるのは田舎なので、車がなければ仕事にはいけません。

そこで「車の免許だけでも持っていれば就職口もあるのに」という言葉が漏れ聞こえてきます。

車の免許を持っていて、ひきこもっている人の話もたくさん聞いているのでとても切ない気持ちになります。

変えるべきは個人の技能ではなくて、ひきこもりの認識です。

例えば、半年家を離れて街で一人暮らしすることは、全く新しい認識をひきこもりに与えてくれます。

ひきこもりの人の将来を保障するのは不可能です。それは、ひきこもりじゃなくても同じ、先のことはわからないのですから。

どうでしょうか?ご家族がお持ちの「その貯蓄」
ひきこもりの子の新しい世界(認識)を開くのに使ってみてはどうですか?



こだまこうじ (元ひきこもり。1976年福岡県飯塚市生まれ、同市在住。)


<プロフィール>
 中学時代いじめ被害、高校で不登校に。その後、最初のひきこもり時代を経験。このとき、「キツイから精神科に連れて行って」と親に泣いて希望するも、完全に無視される。周囲から就労を強要され、専門学校へ入学。その後、就労するも就職先の社員寮で動かなくなっているところを発見され、会社は9か月でクビ。4年間の本格的なひきこもり時代に突入。
 その後、保健所の支援でひきこもりから脱出。2009年、保健師にとってまれにみる成功例として福岡県嘉穂・鞍手保健環境事務所の「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーに就任。自立できるほどの収入はないが、ひきこもり当事者家族の話を聴いて支援をすることになる。
 しかし、2020年に国や県がひきこもり当事者への就労支援を加速させることになり、「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーとしてのお役御免となる。
 「死んで地獄に行ったら、鬼に責め苦を喰らい、極楽に行っても悟った超阿弥陀如来に解脱するまで修行させられる」ことを恐れて、今日も何とか生き延びている。

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