”「共依存」を抜け出す”
四戸 智昭
家族百景Ⅱ「不登校・ひきこもり考―親子の視点から」
西日本新聞朝刊 2013年8月13日 掲載
「子どもにどう接したら良いのか分からない」。不登校やひきこもりの子を抱える親たちからよく、そんな相談を受ける。
書店に多くの専門書や関連本が並ぶ。私が出会う親たちもそんな本を買い求め、自分なりに問題解決の糸口を探る。本を読むにつれ、知識だけは増えていくが、目の前にいるわが子にどう接すれば良いのか、答えが見つからない。
ある母は、不登校の娘を引きずって学校に連れて行った。しかし、どうしても校門をくぐれない。その後、娘からの暴力と暴言がエスカレート。母は娘の変わりように驚くばかりだ。
ある母は、20代のひきこもりの息子に「そろそろ就職活動をしたら」と言葉をかけた。すると、食卓を一緒に囲んでいた息子が、自室にこもり、家族の前に姿を現さなくなった。
親たちは最初、何とか「自分の力」で状況を打開しようとするが、うまくいかない。それどころか、親たちは「また子どもが暴力を振るうのではないか」「また子どもが自室にこもってしまうのではないか」という恐怖におびえる。
その結果、親たちは不登校やひきこもりになった子どもたちに対し、腫れ物に触るかのような態度をとることになってしまう。
こうした状況を、親子の「共依存」と呼ぶ。
親は、子どもの不登校という問題を解決したいために、子どもの手を引いて登校させようとコントロール(支配)する。一見すると、母が子を支配しているように見えるが、実はそれだけではない。今度は子どもが、母の指導を排除しようと、暴力や暴言を使って母を支配しようとする。
共依存とは、コインの裏表のような関係で、当事者の親子は互いが支配し合う関係に陥ってしまっていることに気づかない。不登校やひきこもりの問題を解決するには、親子がこうした共依存状態から抜け出す必要がある。そのために、親子の関係をどう結び直してゆけば良いのだろうか、周囲の支援は…。そんな視点を軸に、これからつづってゆきたい。
不登校やひきこもりの研究、相談対応にあたる福岡県立大学准教授の四戸智昭さんが、自らの経験をひもときながら、解決への糸口や道筋を考える。イラストは、福岡市在住の画家、谷新さんが担当します。