2011/07/08

家族を変える具体的な目標設定

(福岡 楠の会 7月号 会報より)

○専門家への期待と落胆
 あなたのように、不登校やひきこもりの問題で日々辛い思いをしていて、何とか状況を変えたいと思って、やっとの勇気を振り絞って市や県などの行政の支援窓口に電話するときのことを思い浮かべて欲しい。
あなたは、行政支援の窓口で相談にのってくれる専門家なら、きっと自分が抱えている問題を解決してくれるかもしれないと期待して、勇気を出して電話をすることだろう。しかし多くの場合、具体的な問題解決方法を示されないまま相談時間は終了し、ガッカリした思いに包まれるという経験をなさったこともこれまでにあったであろう。
相談電話をかけるまで、あなたは“ひょっとしたら、専門家に説教を受けるかもしれない”とか“ひょっとしたら、自分の子育てを責められるかもしれない”という不安を抱えながら自問自答を繰り返す。それでも、何とか現状を変えたくて、勇気を振り絞って専門家の支援を受けようとあなたが動き出したとき、あなたの心の中にはひとつの大きな期待が膨らむ「きっとこの問題を解決してくれるはず。」という期待である。
自問自答する時間が長ければ長いほど、この期待感は大きく膨らむ。そして、残念ながら、特効薬になるような解決策を専門家が示してくれないと、落胆も大きくなってしまう。



○家族を変化させるのはあなた
 私は、不登校やひきこもりの問題の解決に、速効性のある特効薬はないと思っている。しかし、解決しない問題もないと思っている。ただし、解決には時間を必要とする。人によっては、半年の人もいるであろうし、何年もかかる人もいる。
なぜかというと、不登校やひきこもりという問題が、その家族ダイナミクス(人間関係、家族の力関係のこと)に原因があるのなら、その家族のダイナミクスに変化が生じるためには、ある程度の時間を必要とするからである。



問題を抱えて苦しさの真っ只中にある人は、その解決を専門家に求めるとき、どうしても専門家への期待が大きくなってしまう。私はこれを“専門家に対する幻想”と呼んでいるが、この幻想が強ければ強いほど、専門家依存になってしまいがちで、家族のダイナミクスに変化を生むには、かえってこれが邪魔になってしまう。
家族のダイナミクスに変化を生むためには、その家族が問題を自覚して、主体的に変えようと願い行動することが何より重要である。家族を変化させるのは何よりあなた次第ということである。

○なかなか変わらない家族
 自分の家族を変えたいと願って、自助グループのようなミーティングに足繁く通われる人の中には、「なかなか変わらない。」という落胆にも似た言葉をよく耳にする。なかなか変わらないのは、実は家族の中に変わりたくないと思っている人がいるからである。変わりたくないと願っているのは、あなたのパートナーかもしれないし、ひょっとするとあなた自身かもしれない。それだけ、家族のダイナミクスというのは、一見しただけでは理解するのが難しい。
 それだけに、変化しようとしない家族に変化を生むためには、工夫が必要ということになる。家庭ではこれまで通りの日常生活を送りながら、月に一度のミーティングに通うだけでは、家族に変化はなかなか生まれないのである。
 もしあなたが「なかなか変わらない」と思っているのなら、是非ともあなたの家族の日常生活のパターンを変える具体的な目標を設定して欲しいと思う。



○家族を変える具体的な目標設定

 とある女性の方は、自分と夫との関係に、子どものひきこもりという問題が生まれた原因があることに気がついた。それまでその女性は、夫に子育てのことで気を煩わせまいと、子育てに関しては全て自分で何とか切り盛りしてきたという。夫は、ひきこもっている子どもを見ると、辛くなってしまうということもあり、家では子どもに顔を合わせないでいたという。結局、家族の中で、子どもと心の接触をするのは母だけになっていたということに、この女性は気がついた。
 その日から、女性は子どものことをできるだけ夫に相談するように心がけた。しかし、なかなか夫は心を開いて自分の話を聴いてくれようとはしなかった。それでも粘り強く、“今日の子どもの様子を一日1分だけ夫に語り続けた”。
 これが、この女性の日常を変える具体的な目標設定である。人によってこの目標設定は違う。大切なのは、“家族の日常に変化を生む”目標設定である。
 なかなか、難しくてわからないという方は、是非とも楠の会の例会ミーティングに参加していただきたい。ミーティングでは、参加者たちがこの具体的な目標設定を共有しあっている。他の家族の自覚や目標を聴くことは、専門家以上のパワーになる。

2011/07/01

変化を生むための具体的な目標設定

ひきこもりや不登校のお子さんを抱えた親御さんがよくおっしゃるフレーズがあります。
「毎日、毎日、変化がありません。変化がない毎日なので焦ってしまいます。」

変化がないというのは、家族関係の中にも変化がなくて、毎日同じパターンで過ごしているからです。

変化したいと思うのなら、意識的に変化することを考える事が重要です。
変化しないと言う多くの方が”目標設定”をしていらっしゃらないのです。

私は家族ミーティングの時、必ず参加者に質問していることがあります。
「半年後、どうなっていたいですか?」「そのために、あなたは今日から具体的に何をしますか?」
という質問です。

多くの親御さんが、より良い変化を求めています。例えば、「息子と一緒に外食してみたい。」とか「夫と、息子のことについて話し合えるようになりたい。」など。

そういう半年後になるために、今日から毎日玄関を掃除します。でもよいのです。より具体的な目標設定の方が、自分自身が意識して継続的に取り組むには重要です。

毎日変わらないと思うあなた。今日から旦那さんと毎日散歩に出かけてみませんか。
これで、随分と家族関係が変わるものです。