2020/10/09

ひきこもりサバイバー14 —わかっているけど、言えないこと—

 福岡県立大学で教員をしている四戸智昭です。

 ひきこもりからのサバイバー(生還者)の声に学ぶことが大切だと思い、元ひきこもりのこだまこうじさんにエッセイを書いてもらいました。今回こだまさんが、ひきこもりとしてわかっているけど、なかなか言えなかったことについて書いてもらいました。

◆◆◆

 ひきこもり当事者を持つ家族の願いは、ひきこもりの人が「人並み」に働いてくれることです。

ひきこもって最初の頃の家族は、「外に出るだけ」「他人と関わるだけ」といったソフトなことを言っていても、話を聞いていくと最終的には、「人並みに働く」ことを求めています。

元ひきこもりの私としては、「ハンデがあるのに先に走り出した人たちに追いつく」ことはとても困難だと思います。

マラソンで例えるなら、
「一時間遅れてのスタートです」はプロのマラソン選手が、素人に与えるハンデです。

1時間遅れ(あるいは周回遅れ)を挽回できる実力がひきこもりの人のあるのかというと、私はないと考えています。

そもそも「毎日学校に通う」「毎日会社に通う」という
ルールで死にそうになったからひきこもったわけですから
現行のルールでは他の人に追いつくことができるはずがありません。

この当たり前の現実を、ひきこもり当事者の家族はもとより、実はひきこもりの本人も本当の意味で認識していないように思えます。

私自身を素直に振り返ってみると、ひきこもった本質的な原因は
「体が弱いこと」
にあったような気がします。

他の人より「体が弱い」のに、他の人と同じように「毎日学校に通える、通うのが当然だ!」と自分の能力を過信していたわけです。

ですが自分が「人並み」であるという根拠のない色眼鏡を外して、素直に「自分が人並み以下の人」と認識すると素直にこう思えます。

「周りの人は人並みの強さを持っているから言葉が通じないのだな」と。
まずは、ひきこもり本人があるがままの自分を受け止められるとよいのではないかと思っています。




こだまこうじ (元ひきこもり。1976年福岡県飯塚市生まれ、同市在住。)


<プロフィール>
 中学時代いじめ被害、高校で不登校に。その後、最初のひきこもり時代を経験。このとき、「キツイから精神科に連れて行って」と親に泣いて希望するも、完全に無視される。周囲から就労を強要され、専門学校へ入学。その後、就労するも就職先の社員寮で動かなくなっているところを発見され、会社は9か月でクビ。4年間の本格的なひきこもり時代に突入。
 その後、保健所の支援でひきこもりから脱出。2009年、保健師にとってまれにみる成功例として福岡県嘉穂・鞍手保健環境事務所の「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーに就任。自立できるほどの収入はないが、ひきこもり当事者家族の話を聴いて支援をすることになる。
 しかし、2020年に国や県がひきこもり当事者への就労支援を加速させることになり、「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーとしてのお役御免となる。
 「死んで地獄に行ったら、鬼に責め苦を喰らい、極楽に行っても悟った超阿弥陀如来に解脱するまで修行させられる」ことを恐れて、今日も何とか生き延びている。

0 件のコメント: