2011/01/07

自覚が難しい共依存

(福岡楠の会 ひきこもりの家族会 2011年1月号会報)

福岡県立大学大学院看護学研究科 四戸智昭

12月の例会ミーティングでのミニレクチャー


 昨年12月の例会ミーティングでは、「共依存~受容と言いなり」をテーマに、参加者とのディスカッションを行うことができた。
 言いっぱなし、聞きっぱなしのミーティングが、課題の解決には最高の方法であることは、このエッセイの中でも伝えてきた。しかし、ミーティングだけだと、参加者にとってはどこがポイントで、何が大切なのか?を絞ることなく例会ミーティングが終わってしまう。
確かに、ポイントが曖昧だと、参加者のモチベーションも下がってしまうかもしれない。その結果、参加者がミーティングに訪れてくれなければ、例会は開店休業ということになってしまう。
 それでも、私は、敢えて参加者の皆さんの“聴く耳”と“話す言葉”の能力が徐々に成長するまで、ミーティングだけで終わる例会でもよいのではないかと密かに思っていた。しかし、主催者の皆さんの要望は、「何か学習の要素を取り入れた例会ミーティングをしたい」ということであった。
私も、「人に気に入られたい」という欲望を普通に持っている人間なので、その要望にNOを言えるわけもなく、例会ミーティングにミニレクチャー導入を快諾した次第である。

○共依存の特徴
 ところで、共依存とは、ふたり以上の人間が存在すれば、そこに大なり小なり存在する関係性と言ってもよい。さきほどの私の「人に気に入られたい」という欲求もまた共依存の特徴の一つといえる。多少の共依存性は、人間関係における潤滑油とも言える。他者に気に入られたいという欲求が全くなくなった人間関係も考えものだからである。
 しかし、「他者に気に入られるために、自分の欲求はいつも我慢する」という状態は、滅私奉公のように聞こえはよいが、「他者に受け入れられる」という欲望を満たすための状態であり、決して健全とは言えない。
 言いなりであれ、他者受容であれ、そこに“他者の考え方”や“他者のふるまい”を変えたい(コントロール)したいという欲求が底辺にあれば、それは共依存の行為といえる。
 具体的な例えをあげると、“子どもに学校に行って欲しいから、褒美をあげる”という行為は共依存と言える。
 「褒美の何がいけないのですか?」という質問をされる親がいるが、不登校という課題の渦中にいらっしゃる親は、自分のこの行為が問題であるとはなかなか気がつかない。共依存とは、それだけ本人の自覚が難しい。

○共依存という病気は存在しない
 さて、「共依存」という言葉は、もともとアルコール依存症の治療から生まれた概念である。アルコール依存症の本人に対して、過剰な世話を焼く妻や子に対して付けられた名称がこの「共依存」である。

 依存症は、否認の病とも言われ、本人の自覚を促すことが非常に困難な病気である。にもかかわらず、本人の周囲で過剰な世話焼きをする家族がいると、依存症者本人は自分の病気に自分で気がつくことができない。結果、依存症という病気が長引いてしまう。現代では、アルコール依存だけでなく、ギャンブル依存の治療でも、共依存という考え方を治療の中心にすえるようになってきている。
 依存症という疾患を抱えた本人だけでなく、家族も治療の対象とするようになったという意味においては、この「共依存」という言葉が生まれた意味は非常に大きいと思う。
ところで、この共依存というのは、精神医学上の病名ではない。だから、「私、共依存なので、治していただけますか。」と町の心療内科を訪ねても、おそらく苦笑いされるだけで終わってしまう。だから、自分が共依存だと思っても、何も落ち込む必要はないと思う。“近眼が私の特徴のひとつ”ならそれと同じくらいのものだと考えて良いと思う。

○無自覚な共依存は厄介
厄介なのは、自分の共依存という特徴に気が付いていないことだ。自動車の運転手が、自分の視力が悪いという特徴を自覚していなければ、メガネをかけずに運転をすることになってしまう。その結果は、読者の皆さんにも容易に想像できるであろう。
自分自身の他者との付き合い方を振り返って、そこにどんな共依存的特徴があるか思い出してみていただきたい。
夫の「それ、いいね。」という褒め言葉を搾り出すために、夫の顔色を毎日うかがっていないか。子の笑顔を見たいがために、自分と子ども以外の人間関係をうとましく思っていないか。

こういった振り返り作業は、月に一度ぐらいがちょうどいい。毎日だと滅入ってしまうし、独りでするより、仲間と振り返った方がずっと効果がある。
振り返り作業は、何より自分の変化をうながし、結果的には家族の変化をうながす。例会ミーティングの効能とはそのようなものである。
ぜひ、今月の例会ミーティングにも勇気を出して足を運んでいただきたい。

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