福岡県立大学で嗜癖行動学を研究している四戸智昭です。
ひきこもりからのサバイバー(生還者)の声に学ぶことが大切だと思い、元ひきこもりのこだまこうじさんにエッセイを書いてもらいました。随時掲載の予定です。
今回は、『小さな成功の極意』というお話。
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26で小さな成功は自己完結でやろうという話をしました。
しかしそれが難しいのが私たちです。
小さいと言っても目標というのは「努力して目指すもの」なのでそれを探すことが大変です。
自分で小さいと思っていた目標がほかの人から見たらとてつもなく大きい。
他の人が見ても大きいと気づかないほど巨大な目標なのでみんな小さな目標だと誤解している。
そんなことは多くあります。
自分で小さすぎると思うのでそれを「目標」にすることをためらい実行できない、やっても誇らしい気分や自信がわいてこない。
そういう人も多いと思います。
なんとなく「働いている周りの人たちが普通で正しい」という感覚がひきこもり家族にはあるので焦りばかりが募ります。
そんなときは「今日できたこと」を認めることから始めましょう。
「よし、今日学校に行けたぞ」
「よし、今日は朝ちゃんと起きたぞ」
「よし、今日は一日親と口げんかせずに静かに過ごしたぞ」
ひきこもり側としてはこんな感じでしょうか?
あくまで夜に今日できたことを振り返って認める。
「できたこと探し」です。
小さな目標が難しいのは今、自分が何ができているのかがわからないからです。
はじめの一歩の前に「できたこと探し」をやってみてはどうでしょうか?
もちろん親御さんも一緒にやると自分の小さな目標を発見できるはずです。
こだまこうじ (元ひきこもり。1976年福岡県飯塚市生まれ、同市在住。)
<プロフィール> 中学時代いじめ被害、高校で不登校に。その後、最初のひきこもり時代を経験。このとき、「キツイから精神科に連れて行って」と親に泣いて希望するも、完全に無視される。周囲から就労を強要され、専門学校へ入学。その後、就労するも就職先の社員寮で動かなくなっているところを発見され、会社は9か月でクビ。4年間の本格的なひきこもり時代に突入。 その後、保健所の支援でひきこもりから脱出。2009年、保健師にとってまれにみる成功例として福岡県嘉穂・鞍手保健環境事務所の「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーに就任。自立できるほどの収入はないが、ひきこもり当事者家族の話を聴いて支援をすることになる。 しかし、2020年に国や県がひきこもり当事者への就労支援を加速させることになり、「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーとしてのお役御免となる。 「死んで地獄に行ったら、鬼に責め苦を喰らい、極楽に行っても悟った超阿弥陀如来に解脱するまで修行させられる」ことを恐れて、今日も何とか生き延びている。 |