2025/05/02

—ひきこもりサバイバー50 -ひきこもりが親に「働きもしないで私たちがいなくなったらどうするつもり」と言われると-

 福岡県立大学で嗜癖行動学を研究している四戸智昭です。

ひきこもりからのサバイバー(生還者)の声に学ぶことが大切だと思い、元ひきこもりのこだまこうじさんにエッセイを書いてもらいました。随時掲載の予定です。
今回は、『小さな成功の極意』というお話。

◆◆◆

「私たちが生きている間はいいですけど私たちももう年ですし、もし私たちに何かあったらあの子がこの先どうやって生きていくのか心配です」

親御さんからそういう言葉をたくさん聞きます。

私も両親からよく聞きました。

怒りながら、泣きながら、何度も聞かされました。

そんなとき「じゃあどうすればいいの?」と尋ねることができればひきこもりの私たちはどれだけ幸せでしょうか?

「じゃあどうすればいいの?」

に対する答えに耐えられる自分がいると信じられればどれほど幸せでしょうか?

「じゃあどうすればいいの?」

と尋たときに返ってくる答えにはわしたちひきこもりは耐えられません。

「何でもいいから外に出て人と触れ合いなさい」

「アルバイトでいいから働いてみて」

「仕事を探しなさい」

どれにも耐えられない自分がいるので私たちひきこもりはそれができない理由を口にするか、沈黙を貫くことになります。

それはとてもつらいことです。

苦しいことです。

情けないことです。

「自分でできない自分を探して自分の口から発表すること」は親の思う「他の家の子供はみんなちゃんと働いたり、家庭を持ったりしているのにうちだけはそれをさせてやれなかった」という気持ちと同じです。

親子で手を取って「できなかったこと」「できてないこと」をぐるぐると強化しています。

「何かできそうなことを思いついたらやってごらん。できてもできなくてもいいから。だって何かをやってみないとそれができるかできないかどうかわからないじゃないの。できることを探すためにやってごらん」

そんな気持ちで話ができるようになれば親子ともども「失敗すること」「失敗したこと」へのこだわりが軽くなるのではないでしょうか?



こだまこうじ (元ひきこもり。1976年福岡県飯塚市生まれ、同市在住。)


<プロフィール>
 中学時代いじめ被害、高校で不登校に。その後、最初のひきこもり時代を経験。このとき、「キツイから精神科に連れて行って」と親に泣いて希望するも、完全に無視される。周囲から就労を強要され、専門学校へ入学。その後、就労するも就職先の社員寮で動かなくなっているところを発見され、会社は9か月でクビ。4年間の本格的なひきこもり時代に突入。
 その後、保健所の支援でひきこもりから脱出。2009年、保健師にとってまれにみる成功例として福岡県嘉穂・鞍手保健環境事務所の「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーに就任。自立できるほどの収入はないが、ひきこもり当事者家族の話を聴いて支援をすることになる。
 しかし、2020年に国や県がひきこもり当事者への就労支援を加速させることになり、「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーとしてのお役御免となる。
 「死んで地獄に行ったら、鬼に責め苦を喰らい、極楽に行っても悟った超阿弥陀如来に解脱するまで修行させられる」ことを恐れて、今日も何とか生き延びている。

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