2025/06/13

—ひきこもりサバイバー56 -ひきこもり流、やって後悔するよりも何もやらずに我慢する方がいい-

 福岡県立大学で嗜癖行動学を研究している四戸智昭です。

ひきこもりからのサバイバー(生還者)の声に学ぶことが大切だと思い、元ひきこもりのこだまこうじさんにエッセイを書いてもらいました。随時掲載の予定です。
今回は、『ひきこもりの継続を強力にする小さな成功体験』というお話。

◆◆◆

「やって後悔するよりも何もやらずに我慢する方がいい」

あなたはこれを聞いて何を感じるでしょうか?

もしあなたが「成功するか失敗するかわからないならチャレンジするべきだ」と考えるポジティブな方なら「どうせ後悔するならばやって後悔する方がいい」の覚え間違いじゃないかと思うかもしれません。

そしてその考え方こそがひきこもりの人に対する親や社会の「家に引きこもっていないで外に出て人や社会とかかわるようになれば何とかなる」という考え方の源泉となっているように思えます。

すごく簡単な言い回しをすると

「根拠のない自信を持って行動しなさい。上手くいくかもしれないから」

です。

今の社会はチャレンジして発展する社会なのでこの考え方はとても時代に合っています。

企業家精神を持った人が誰もやっていないことにチャレンジして新しいビジネスが生まれ、仕事が生まれ、失業者が減るという流れが上手くいくようにするのが理想なのでチャレンジ、ベンチャーは必要不可欠です。

これが今の社会の基本です。

基本なのですが、私たちひきこもりは「自信の持てない慎重な人」です。

起業するより大会社の地方支社の社員になることを選ぶタイプです。

成功するかしないかわからないことをするなんて!

もし失敗したらどうするんだ!

と思ってしまいます。

なぜなら

「学校や会社で追い詰められてひきこもった人たちは追い詰められた人間がどんなに危険なことを考えるかを体験しているから」

です。

本当に追い詰められると選択肢は

「自分を消すか」

「相手を消すか」

の二択になります。

相手を「当たり前」に置き換えればその緊急性を分かってもらえるかもしれません。

閉塞感のある社会を変えるために今の国際秩序を無視してイスラム国を建国するぞ!

そのベンチャー国家建設のためのテロ行為にチャレンジするイスラム教徒は関係のない外国の人たち。

追い詰められた人間はどんなギャンブルにでも手を出すものなのです。

あなたはそれでもチャレンジをした方がいいと思いますか?





こだまこうじ (元ひきこもり。1976年福岡県飯塚市生まれ、同市在住。)


<プロフィール>
 中学時代いじめ被害、高校で不登校に。その後、最初のひきこもり時代を経験。このとき、「キツイから精神科に連れて行って」と親に泣いて希望するも、完全に無視される。周囲から就労を強要され、専門学校へ入学。その後、就労するも就職先の社員寮で動かなくなっているところを発見され、会社は9か月でクビ。4年間の本格的なひきこもり時代に突入。
 その後、保健所の支援でひきこもりから脱出。2009年、保健師にとってまれにみる成功例として福岡県嘉穂・鞍手保健環境事務所の「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーに就任。自立できるほどの収入はないが、ひきこもり当事者家族の話を聴いて支援をすることになる。
 しかし、2020年に国や県がひきこもり当事者への就労支援を加速させることになり、「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーとしてのお役御免となる。
 「死んで地獄に行ったら、鬼に責め苦を喰らい、極楽に行っても悟った超阿弥陀如来に解脱するまで修行させられる」ことを恐れて、今日も何とか生き延びている。

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