福岡県立大学で嗜癖行動学を研究している四戸智昭です。
ひきこもりからのサバイバー(生還者)の声に学ぶことが大切だと思い、元ひきこもりのこだまこうじさんにエッセイを書いてもらいました。随時掲載の予定です。
今回は、『小さな成功の極意』というお話。
◆◆◆
私はひきこもりを経験する前に不登校を経験しています。
私が高校三年生のとき夏休みを入れて三か月ほどの短い経験で、その後、先生方のおかげで無事高校は卒業させてもらっていますがそれでもあれから28年たった今でも
「暗くて逃げられない教室の中に閉じ込められて、やりたくないけれどやらなければならない勉強らしきことを机に向かってやっている」
を夢に見ます。
「また明日も学校に行かないと」いうと暗い気持ちで目覚めます。
そして「もう高校生じゃないから学校に行かなくていいのだ」と気づきます。
私は何とか高校を卒業させてもらっているので「不登校を貫いて高校を辞めた人たちに申し訳ない気持ち」や「自分が何だかんだで自分の意志を貫かなかった卑怯者だ」という気持ちがあるのかもしれません。
それとも先生たちが一生懸命助けてくれるのだからと悲鳴を上げる心を押し殺してがむしゃらに頑張ったために心が悲鳴を上げたことに気づいて欲しい、気づかないとダメだという心からのメッセージなのかもしれません。
「もう学校に行かなくていい」
と気づくのでひきこもり状態のときからずっと見続けている夢です。
目覚めたときには心底疲れ果てています。
ひきこもりをやめて支援機関の作業所に通い始めてからもそうでした。
障碍者就労をしてからも同じです。
そしてそれをやめてしまった今でも同じ夢を見ます。
私の経験に従って考えると心と体が疲れ果てているときにこの夢を見るようです。
不登校を経験した人たちが私と同じような形で心の傷を何度も見せつけられていないことを祈りたいと思います。
みんなと違い不登校になったということは「みんなと同じでいたかった」ひきこもりの人には耐えがたいことなのかもしれません。
それとも何とか卒業させてもらった私のような者だけが感じる引け目なのでしょうか?
こだまこうじ (元ひきこもり。1976年福岡県飯塚市生まれ、同市在住。)
<プロフィール> 中学時代いじめ被害、高校で不登校に。その後、最初のひきこもり時代を経験。このとき、「キツイから精神科に連れて行って」と親に泣いて希望するも、完全に無視される。周囲から就労を強要され、専門学校へ入学。その後、就労するも就職先の社員寮で動かなくなっているところを発見され、会社は9か月でクビ。4年間の本格的なひきこもり時代に突入。 その後、保健所の支援でひきこもりから脱出。2009年、保健師にとってまれにみる成功例として福岡県嘉穂・鞍手保健環境事務所の「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーに就任。自立できるほどの収入はないが、ひきこもり当事者家族の話を聴いて支援をすることになる。 しかし、2020年に国や県がひきこもり当事者への就労支援を加速させることになり、「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーとしてのお役御免となる。 「死んで地獄に行ったら、鬼に責め苦を喰らい、極楽に行っても悟った超阿弥陀如来に解脱するまで修行させられる」ことを恐れて、今日も何とか生き延びている。 |
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