福岡県立大学で嗜癖行動学を研究している四戸智昭です。
ひきこもりからのサバイバー(生還者)の声に学ぶことが大切だと思い、元ひきこもりのこだまこうじさんにエッセイを書いてもらいました。随時掲載の予定です。
今回は、『ひきこもりの継続を強力にする小さな成功体験』というお話。
◆◆◆
睡眠負債の返済のためにひたすら眠りごろごろする。
晴れた日は五分だけでも公園にいる。
という仕事に行っている14年間はしなかった本格的なひきこもり生活というのはじんわりします。
「もう50近いのにこれでいいの?」
「いや50近いから今のうちに休んで調子を戻さないといけないんだよ」
そんな二つの想いがぶつかり合います。
ただ眠りと公園だけでも「継続」しているということがあせりを慰めてくれます。
あとは両親が「今はゆっくりしなさい」と優しいことにも救われています。
ただ優しくされると「もう少し頑張れるのでは?」と思ってしまう私です。
そんなとき福岡の精神保健センターの「ひきこもりサポーター講座」にゲストとして呼んでいただきました。
そこで「困った」「何かした方がいいのでは?」と口にしてみると講師の長阿彌さんや楯林先生に「まあ、そういう過ごし方もいい、何事も経験だ」と言ってもらい、ひさしぶりな保健士さんたちやはじめましての保健士さんに「あなたはちゃんとがんばってますよ」と言ってもらい、部屋別リモートなんかも体験してとても気分が楽になりました。
人に認めてもらえることはとても大事ですね。
よーし、もうやりたいと思ったことを直感的にやってやろう!
神社とか、ひなびた温泉とか時間がある今一人で行きたいなぁ。
そんな気持ちになりました。
が、世の中ではコロナ第五波が発生し県外移動はさすがに無理なのでおとなしく、今までの生活を継続しています。
きっと天が「まだ時ではない、家にいた方がいいよ」と言っているのでしょう。
こだまこうじ (元ひきこもり。1976年福岡県飯塚市生まれ、同市在住。)
<プロフィール> 中学時代いじめ被害、高校で不登校に。その後、最初のひきこもり時代を経験。このとき、「キツイから精神科に連れて行って」と親に泣いて希望するも、完全に無視される。周囲から就労を強要され、専門学校へ入学。その後、就労するも就職先の社員寮で動かなくなっているところを発見され、会社は9か月でクビ。4年間の本格的なひきこもり時代に突入。 その後、保健所の支援でひきこもりから脱出。2009年、保健師にとってまれにみる成功例として福岡県嘉穂・鞍手保健環境事務所の「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーに就任。自立できるほどの収入はないが、ひきこもり当事者家族の話を聴いて支援をすることになる。 しかし、2020年に国や県がひきこもり当事者への就労支援を加速させることになり、「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーとしてのお役御免となる。 「死んで地獄に行ったら、鬼に責め苦を喰らい、極楽に行っても悟った超阿弥陀如来に解脱するまで修行させられる」ことを恐れて、今日も何とか生き延びている。 |
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