2021/11/04

ひきこもりサバイバー30 ―ひきこもりが外に出ない根っこは?―

福岡県立大学で嗜癖行動学を研究している四戸智昭です。

ひきこもりからのサバイバー(生還者)の声に学ぶことが大切だと思い、元ひきこもりのこだまこうじさんにエッセイを書いてもらいました。随時掲載の予定です。
今回は、『ひきこもりが外に出ない根っこは?』というお話。

◆◆◆

楠の会でひきこもり生活はつらいという当たり前の話をちゃんとやろうと思っていたのですが前日に雪がちらついたおかげで、

 ふと

 「そうか何かあると外に出たくない、人に会いたくないという気持ちは、実は自分がひきこもりの苦しみを話すことで”家族が悪い”ということにされることが怖かったのだな。」

 と気づきひきこもり生活についての考えが一変してしまいました。

 学校が嫌だったり、会社がつらかったりする 中で、「甘えている」、「心も体も弱いから」という理由よりも 

「家で一番悪いことをしている私という存在が、外で苦しみを話すと苦しみを何とかしてあげられない家族が悪い」

 となってしまうことが怖かったとわかったわけです。

 当たり前のことですが時間は流れ、状況は変わります。

 最初は

「学校が嫌だった」

「毎日、同じことをして心がすり減った」

「もともと体が弱いのに無理をした」

 という原因で、ひきこもった私がひきこもりという存在になったことで今度は

 「外に出たくても出られない」

 という状況に陥ってしいました。

 この当たり前のことに気づけなかったのは 私自身が気付きたくなかったからでしょう。

 しかし会ったことのない人とのメールのやり取りと、天候の変化にさらされて、ふと気づいてしまいました。

 環境が変わると人は変わるといいますが場所だけではなく、

「 メールと天気だけでいろいろ変わっていけるのだと」

 今更ながらに実感した瞬間でした。

人間って本当に面白いですね。





こだまこうじ (元ひきこもり。1976年福岡県飯塚市生まれ、同市在住。)


<プロフィール>
 中学時代いじめ被害、高校で不登校に。その後、最初のひきこもり時代を経験。このとき、「キツイから精神科に連れて行って」と親に泣いて希望するも、完全に無視される。周囲から就労を強要され、専門学校へ入学。その後、就労するも就職先の社員寮で動かなくなっているところを発見され、会社は9か月でクビ。4年間の本格的なひきこもり時代に突入。
 その後、保健所の支援でひきこもりから脱出。2009年、保健師にとってまれにみる成功例として福岡県嘉穂・鞍手保健環境事務所の「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーに就任。自立できるほどの収入はないが、ひきこもり当事者家族の話を聴いて支援をすることになる。
 しかし、2020年に国や県がひきこもり当事者への就労支援を加速させることになり、「ひきこもり家族相談会」のアドバイザーとしてのお役御免となる。
 「死んで地獄に行ったら、鬼に責め苦を喰らい、極楽に行っても悟った超阿弥陀如来に解脱するまで修行させられる」ことを恐れて、今日も何とか生き延びている。