2011/04/15

共依存と養育体験に関する研究

拙著「共依存の構造とスケールに関する研究」(アディクションと家族,14(4),)については、たまにスケール利用について、許諾を求められることがある。
数量化されたスケールの重み付けが必ずしも一次元尺度構成になっていない項目があるので、未熟なスケールなのだが、利用していただく研究者には感謝の気持ちで一杯である。

そのような中、過日、小崎由香里氏より「過去の養育体験と共依存、抑うつとの関連」という修士論文の研究成果を頂戴した。上述の共依存スケールを用いた研究だが、非常に示唆に富む結果を頂戴したので、その一部を紹介したい。


●共依存と抑うつの弱い正の相関
-共依存傾向が高くなると、抑うつ傾向が高くなる傾向があった。
【感想】
特定の人物に対して共依存している状態であれば、つまりその人に依存的になっている状態であれば、自らの抑うつ傾向はむしろ弱まると考えてよいと思われる。(共依存の人は、万年抑うつ状態はとは考えにくい。抑うつを解消するために、誰かに依存していると考えるとわかりやすい。)
何かに依存している最中は、セルフに対する気づきは弱まり、抑うつ傾向は弱まるのではないか。
この点、共依存スケールは、誰かに依存的になっているか?なっていないか?の定点的なデータを収集して作成していないので、今後の検討が必要であると感じた。

●共依存傾向と養育体験の関係
-共依存傾向は、「拒絶」「兄弟ひいき」「情緒的あたたかみ」との関連があった。
【感想】
人を求めずにはいられないという共依存的特徴は、親からの拒絶や兄弟間の差別によって生み出されることを示した結果だと思う。親からの無条件の愛情が得られないことにより共依存傾向は強まるものと思われる。

0 件のコメント: